汚職と偽造で不信任案可決。スペインでラホイ政権が6年の歴史に終止符

 バスク国民党が態度を保留していたのにはわけがあった。バスク国民党はカタルーニャの独立問題では政府がカタルーニャの自治機能を中断させて憲法155条を適用したことに反対していたのだ。だから、カタルーニャの独立政党が不信任案に賛成するのであればバスク国民党もそれに同調すべきだという意見も党内にあって、党が賛成と反対で二分していたというわけだ。  しかし遂に、バスク国民党は5月31日の審議日の午前中に不信任案に賛成することを決めたという。ペドロ・サンチェス党首が政権を担うことになった場合も、下院で2018年度の予算に賛成することを演説の中で表明したのである。彼の演説内容からバスク州への投資は確保されたことになるとバスク国民党は判断した。  元々、不信任案の提出には反対していたバスク国民党はラホイ首相に、否決に回る唯一の条件として、採決の前にラホイ首相が辞任すること、という条件をつけていたようだ。そして、辞任しないのであれば、賛成に回るとラホイ首相に回答したという。(参照:「El Diario」、「El Espanol」)  そしてついに31日の午後、バスク国民党の代表アイトール・エステバンは演壇に立って不信任案に賛成を投じることを表明した。ラホイ首相が辞任することを断ったからである。この決定によって同日の夕方には賛成180議席が確保されたのであった。

そしてねじれ国会的な状態へ

 6月1日の投票前の31日の夜、一部のメディアから<ラホイ首相が辞任して副首相か下院議長を暫定的に首相に任命する意向のあるということをバスク国民党に打診している>という報道が流れた。それから1時間程度経過してコスペダル幹事長がラホイ首相が辞任する意向はないということを明確にした。理由は“数字的に合わないからだ”とした。これが意味するものは、仮にバスク国民党が投票時に不信任案の反対に回っても、国民党が後任の首相を選任して可決させるには176議席までまだ2議席たらないからである。この2議席の説得には時間が必要で、即座の解決は無理だと判断したようである。そこで、ラホイ首相は最終的に敗退を素直に受け入れたようだ。(参照:「OK Diario」、「OK Diario」)  6月1日の午後、社会労働党のサンチス党首が首相になった。しかし、同党の執行部でも動揺があるという。理由は定数350議席の中で僅か84議席で政権を担うことなど不可能だからである。議会で議案を可決させるには自党の議席数以上の議席を他政党から集めねばならないからである。しかも、上院は国民党が依然過半数を占めている。  フェリペ・ゴンサレス元首相ら党の重鎮は9月か10月に前倒し総選挙をすべきだと言っている。  それを素直にサンチス党首が受け入れるか疑問もある。何故なら、現在社会労働党への支持は依然と平行線を保ったままで、同党の前に位置して支持率が急上昇しているのがシウダダノスである。シウダダノスは現在32議席しかないが、中道右派として国民党からの支持者が移っており、その数は310万人と言われており、支持率ではトップの28.6%を記録している。その次に社会労働党20.6%となっている。310万人の票というのは議席数にて30-35議席が国民党からシウダダノスに移ることを意味している。どの世論調査でも、次期総選挙でシウダダノスの政権が誕生すると予測されている。(参照:「El Confidencial」)  この様な可能性のある中で、サンチェス党首が首相になって早い時期に総選挙に打って出る可能性には疑問がある。しかし、仮に政権を長く維持しようとすれば、カタルーニャの独立政党にも譲歩を余儀なくさせられる可能性も十分にある。そしてそれは社会労働党の幹部や重鎮が最も望んでいないことなのである。 <文/白石和幸 photo by European Peoples Party via flickr(CC BY 2.0)> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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