汚職と偽造で不信任案可決。スペインでラホイ政権が6年の歴史に終止符

白石和幸
PMRajoy

photo by European Peoples Party via flickr(CC BY 2.0)

 スペインの現首相マリアノ・ラホイ(国民党PP)はついに6年の政権に終止符が打たれることになった。

 野党第1党PSOEのペドロ・サンチェス党首が提出した内閣不信任案が6月1日に可決し、午後に彼が7代目の首相に就任したのだ。この不信任案の提出の動機となったのは、5月25日、スペインのアウディエンシア(テロや汚職を専門に審議する裁判所)で、ラホイ首相の属する国民党に以前属していた国会議員や地方自治体の首長ら29人が汚職に関与していたとして有罪の判決が下ったことに起因している。

汚職と偽造でちゃんと支持率低下

 その汚職に共通している手口は公共事業などを企業が受注するのに議員に手数料を払い、その見返りに受注を貰うというものである。そして、貰った手数料は関係議員に配り、同時に国民党の経理担当が二重帳簿を使ってそれをスイスの銀行などに隠し預金していたというのが発覚したのであった。

 この汚職事件以外にも、バレンシア州政府で同じく国民党の政権時に汚職があったことが発覚し、現在それが公判中である。

 また、マドリードの国民党所属の前州知事が学歴を偽造していたというのが報道メディアによって明らかにされ、厳しい追跡調査から最終的に辞任せざるを得なくなったという最近の出来事もあった。更に、国民党が絡んだ他にも汚職事件の公判が続いている。

 これら汚職と偽造が政府与党国民党に絡んだ事件として国民の間でも同党への不信が高まり支持を急激に落として行った。しかも、これらの事件が急激に発生したのではなく、例えば今回の不信任案を提出する動機となった汚職事件が明るみになったのは2007年で、それから少しづつ汚職の全貌がメディアで明らかにされるようになったのである。そして、それに比例して国民の政府与党への不信が次第に募って行った。それが遂に今回の内閣不信任案を導くことになったのである。

ラホイ首相の命運を分けた5議席

 5月25日、社会労働党が不信任案を提出し、下院での審議を5月30日木曜日に行うとことが下院議長によって発表された。

 ラホイ首相はなぜその審議を早急にすることを決めたのか? 理由は、不信任案が賛成多数で可決するには僅か84議席しかない社会労働党が過半数の176議席まで到達するにはカタルーニャの独立を主張する2政党を合わせて7政党が味方につくことが必要だとラホイ首相は見たのである。その中にはバスク国民党(PNV)の5議席がどちらの側に付くか疑問視されていた。この5議席が不信任案の賛成に回れば180議席で可決するのであった。それ以外の政党はほぼ賛成か反対かを表明していた。

 バスク国民党はつい最近、2018年度の国家予算の下院での可決に協力している。しかし、上院での採決はまだ済ませていない。上院は国民党が過半数の議席を持っている。この予算の中には5億4000万ユーロ(700億円)がバスク州に投資されることが盛り込まれている。上院で過半数の議席を持っている国民党がこの予算を故意に否決させれば、また下院に戻って審議が必要となり、仮に社会労働党の政権が誕生すると、この投資額が水の泡となってしまう可能性もある。それが起きないようにするにはバスク国民党は不信任案の反対に回った方が良いというサインを政府が送ったのである。

 更に、ラホイ首相は不信任案の審議まで長い期間を置くと、どのような変化が起きるか分からない。早い内に審議した方が良い、現状の儘であれば否決に持ち込めると踏んだようである。(参照:El Diario」)

 国民党の方は134議席で、それに4政党を加えて169議席は確保していた。しかし、176議席には7議席たらない。何れにせよ、最後まで立場を明確にしようとしないバスク国民党の5議席が賛成に回らなければよいのであった。

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スペイン国会はねじれ状態へ

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