好事例の報告をとりまとめる目的は、それをメンバー全員で共有して、類似の好事例を創出することにあります。類似の好事例を創出するためにも、プロセスマッピングは役立ちます。
類似の好事例というのは、同じ要素をもったアクションというように置き換えることができます。時系列で整理し、キーになるアクションを見極めて分解するプロセスマッピングの方式を使えば、パーツ・パーツのアクションのどこに手応えがあったかを見極めることができますので、好事例のコアな要素を特定できるのです。
そのコアな要素と同じ性質をもったアクションをしていけば、類似の行動をしやすくなり、好事例を創出しやすくなるのです。
例えば、取り上げたプロセスマッピングの事例で、「状況を説明」したことが最も手応えのあるアクションで、「お客さまに対して、状況を包み隠さず説明したことが、お客さまからの信頼の下げ止まりに役立った」からだったとします。
報告を取りまとめる部門は、「お客さまからの苦情に対して、状況を包み隠さず説明したという事例を、お持ちの人は挙げてください」というように募っていけばよいのです。
ここで、好事例を集めやすくするために、とても有効な方法があります。その報告をしやすいモチベーションファクターの人に依頼する方法です(参照:
業務のボトルネックを見極めて生産性を向上する超簡単な方法)。
この事例では、自分が他者協調のモチベーションファクターの持ち主だったので、相手の気持ちを受容し共感し、自身の謝罪の気持ちを相手に伝えやすく、苦情の解消につながった側面がありました。
同じ他者協調のモチベーションファクターの持ち主に対して、「お客さまからの苦情に対して、状況を包み隠さず説明したという事例を、お持ちの人は挙げてください」というように募っていけば、格段に好事例は集まりやすくなります。
このようにアクションを分解すると、具体的でわかりやすくなるだけでなく、相手に対しても伝わりやすくなります。共通項を見出しやすくなり、同様の行動をすることで、好事例を創出しやすくできるのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第85回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある