ガザのデモ参加者ら。みな武装しておらず、丸腰だ
こうした現地取材の経験から見ると、ガザについての日本での報道には違和感を感じる。「衝突」という言葉が日本のメディアでは多用されていたが、デモ参加者らは投石などはするものの、それはあくまで象徴的なもの。境界の向こう側のイスラエル兵までは届かない。仮に届いたしたとして、軍用ジープの中にいるイスラエル兵がケガをするわけでもない。
他方、イスラエル軍は全く容赦がない。「衝突」というよりも、イスラエル軍による一方的な「虐殺」というほうが実態に近い。圧倒的な被害の差を無視した悪平等主義的な表現は、かえって視聴者・読者に現実を歪めて伝えることになるのではないか。
バタフライバレットによる傷。足首がほとんど無くなっている
ガザでの「虐殺」は、日本にとっても他人事ではない。安倍政権はこの間、イスラエルとの関係を深めており、5月初めに同国のベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した際、「防衛、サイバー分野」で日本とイスラエルが協力することで合意している。
また、安倍政権が武器輸出三原則を2014年に撤廃してから、イスラエルの軍事企業が露骨に日本でセールスを行うようになっている。今年8月にも、川崎市とどろきアリーナで「ISDEF JAPAN」(イスラエル防衛&国土安全保障エキスポ)が開催される予定だという。
ガザでの「虐殺」をめぐり、イスラエルに対して国際的な批判が高まっている。国連安保理の緊急会合では、中東や欧州などの国々から批判や懸念の表明が相次ぎ、イスラエル大使への抗議や出国勧告なども行われている。イスラエルをかばう米国に対しても批判が集まっている状況だ。
そうした中で、イスラエルと「防衛、サイバー分野」で関係強化をしていくことが、果たして日本の国益にかなうことなのだろうか。
<取材・文・撮影/志葉玲>
フリージャーナリスト。パレスチナやイラクなど紛争地での現地取材のほか、原発や自然エネルギー、米軍基地、貧困・格差など、幅広い分野を取材。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『
たたかう! ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『
原発依存国家』(扶桑社新書)、『
イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」事務局長