足立区vs自民党都議の「中学生からの性教育」論争を欧米人はどう見たか?

 中学校でコンドームの着け方を教えるのはアリ? ナシ? 今年3月に東京都足立区の公立中学校で「2人が合意すれば、高校生になれば性交をしてもよいか?」「正しい避妊方法は?」といったアンケートが行われ、波紋を呼んだ。

性教育でも格差が激しいアメリカ

 アンケートが行われたことについて、都議会自民党の古賀俊昭都議は「不適切」だと批判し、東京都教育委員会は学習指導要領を超える「課題のある授業」だとした。東京都教育委員会は性交・避妊・中絶は高校で指導する内容なので学習指導要領を守るべき、古賀俊昭都議は学習指導要領から外れているうえ、中学生は性交を学ぶ発達段階にないと主張している。  ところが、足立区教育委員会は義務教育が終わる段階で教える意義もあり、不適切ではないと真逆の考え。アンケートが行われた中学校の校長も、10代の妊娠・中絶・性感染症は深刻であり、人権教育の一環だとしている。  相模ゴム工業が発表した『ニッポンのセックス』によれば、日本人の初体験平均年齢は20.3歳。20代に限定すると男性は18.9歳、女性は18.5歳と、概ね大学生ぐらいが境目となっている。  ならば性教育は高校に入ってからで十分……と思えなくもないが、高校に入るまでセックスについて知らないという人は存在しないだろう。  スマホやパソコンを開けば、いくらでもアダルト動画や成人漫画に触れることができる。そういったセックス観を基準に育ち、高校生になってから避妊・中絶・性感染症について学ぶというのは、かなり歪な仕組みにも思える。  ちなみにユネスコは『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』で、性教育の開始を5歳に設定している。  ユネスコ基準からすると、かなり時代遅れな日本の性教育だが、欧米各国ではどのようになっているのか?  アメリカは’14年にはオレゴン州の中学校でコンドームが配布されるなど進歩的なイメージが強いが、実際に話を聞いてみると日本と同じく問題点はあるようだ。 「アメリカでの性教育は、まだまだ不十分だと思う。教育に関してはなんでもそうだけど、スカンジナビアのモデルが一番だ。オープンで有益、そして的を得てる。アメリカでは『性に関する教育は不必要だ!』という一部の信心深い人たちのせいで、いまだに議論が行われている状態。キリスト教系の私立高校に通っていたコに話を聞いたら、コンドームの存在すら教えてなかったよ! 無知であることは、望まない妊娠や性病と直接結びついているのに」(アメリカ人・男性・37歳)  宗教団体などの力が強い国や地域では、教育機関が性教育を行うことに対して反発がある。また、それ以前に行う余裕がないという問題もあるようだ。 「アメリカではそもそもお金が行き渡っていない学校があったり、教育全般に問題があるから、あまりいい状況とは言えないね。結論を言うと、肉体的に妊娠できたり、病気を伝染させる可能性のある人は、セックスについて学べることをすべて学ぶべきだ。自由に質問できる環境が必要で、こういった問題は自分の経験から学ぶべきじゃない。(足立区の議論で)『まだ若すぎるから』って主張は意味不明だし、ちゃんと子どもにセックスを教えろよ!」(同)  アメリカでは経済的な面だけでなく、教育面でも格差が大きいようだ。
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