日大アメフト部騒動。過度な断罪は当事者性を失わせてしまう<アーチャリー・松本麗華の新連載>

過度な断罪は出来事を「他人事」にしてしまう

 今の状態は、仮にお二人が真実を語っていたとしても、「嘘つきで無責任だ」と周囲が断罪をしてしまうことになりかねません。  わたしたちは今、インターネットの発達により、Twitterやブログ、フェイスブックなど、マスメディアに頼らず一人ひとりが情報を発信できる時代を生きています。そのためでしょうか。マスコミが批判的に報じる人に対し、非難や攻撃が集中、社会全体が行うリンチのような状態になってしまうことがあります。  そして多くの場合、「過ちをおかした人」が謝罪する相手は、直接の被害者ではなく、マスコミが相手になります。マスコミに対する「過ちをおかした人」の態度が悪いと、マスコミは「反省がない」とさらにバッシングをすることがあります。  一体、「過ちをおかした人」は、誰に対して、何のために謝罪を要求されているのでしょうか。 「過ち」をおかした人間を相手に、正義の名のもとに正論を振りかざすのは気持ちがいいものです。マスコミや大多数の後ろ盾があるなか、自分は責任を負わずに、一方的に他人を責めることができます。相手は事実関係を話そうとすれば、「反省をしていない」「開き直っている」とバッシングされるため、基本的にはただ黙して嵐が去るのを待つしかありません。  社会からのバッシングは、とても耐えがたくつらいことです。わたし自身の経験からも、そのつらさは筆舌に尽くしがたいです。ときには、自死せざるを得ないところまで追い込まれてしまいます。  自分を正しいと感じ憤っているとき、今一度立ち止まり、ブレーキをかけて考えることが必要ではないでしょうか。  わたしたちはなぜ、社会的正義の名の下に、そこまで人を追い詰めてしまうのか。当事者でもない第三者が、過剰に人を攻撃をすることは、自分自身が、「過ちをおかした人」となり、直接の加害者とはなってはいないか。わたしはそんなことを日々自問しながら、生きています。  また誰かを絶対悪として断罪することは、起きた出来事を「人ごと」にしてしまうため、教訓を得られないという弊害も生じます。  わたしは、第三者が行うべきは、同様の事件の再発防止のために、自分なりに、ひとつひとつの要因を精査して、原因を解明し、自分たちにも同じような要因がないかを省みることだと思います。  今回は、たまたま日大アメフト部の問題が浮き彫りになっただけで、いつ何時、同じような事件が、自分の所属する組織で、あるいは個で繰り返されないとも限りません。
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選手が同調圧力に屈したことを、私たちは責められるのか
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