もうひとつの目的は、地球を飛ぶドローンへの技術移転である。宇宙開発の技術を、私たちの生活に役立てることは「スピンオフ」と呼ばれ、すでに多くの分野で始まっている。
たとえばNASAの火星探査車は、自律して走行できることから、昨今開発が盛んに行われている自動運転車と共通点が多い。そこで、NASAと自動車メーカーはすでに、自動運転車の共同研究を行っている。
この共同研究ではさらに、NASAが自動車メーカーに自動運転のノウハウを教えるとともに、逆に自動車メーカーから教わり、それを次の火星探査車の開発に活かすこともあるという。
NASAの火星探査車は長い歴史をもつが、その数は少ない。しかし、地球上なら何台もの車を使って、テストコースを延々と走らせることができるため、得られる情報量は桁違いに多くなる。こうしたお互いの得手不得手を補い合うことで、結果的にお互いにとってプラスになる、相乗効果が期待できる。
火星を飛ぶドローンもまた、その技術が地球のドローンの飛び方や安全性の向上につながるのと同時に、自身の技術をさらに進歩させることもできる。
火星ヘリコプターは、火星についての新たな知見をもたらすだけでなく、まわりまわって、私たちの生活をより豊かにしてくれるかもしれない。そしてその技術がまた、次の火星探査へと役立てられることになる。
火星ヘリコプターの想像図 Image Credit: NASA/JPL-Caltech
<文/鳥嶋真也>
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行っている。著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・News | Mars Helicopter to Fly on NASA’s Next Red Planet Rover Mission(
https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=7121&utm_source=iContact&utm_medium=email&utm_campaign=NASAJPL&utm_content=helicopter20180511-1)
・NASA Mars Helicopter Technology Demonstration – YouTube(
https://www.youtube.com/watch?v=oOMQOqKRWjU)
・Autonomy and Robotics | NASA(
https://www.nasa.gov/centers/ames/research/area-autonomy-and-robotics.html)
・Nissan Test Drives NASA Space Technology for Use in Driverless Cars | NASA(
https://www.nasa.gov/ames/image-feature/nissan-test-drives-nasa-space-technology-for-use-in-driverless-cars)
・Mars 2020 Rover | NASA(
https://www.nasa.gov/mars2020)