元磐田のカレン・ロバート、アジアリーグ契約時に代理人に騙された経緯を語る<1>

タカ大丸

いつまで経っても送られてこない契約書

 ここで一つおさらいをしておこう。少し面倒くさい部分もあるが、世界のプロサッカーを知るうえでどうしても把握しておく必要があるからだ。

 全世界のプロサッカーを統合する組織がFIFAである。Jリーグも、このFIFAに加わる傘下組織の一つである。FIFAに加わっていなければ、ワールドカップにも参加できない。

 そしてFIFAには「一か国につきリーグは一つ」という原則がある。J2やJ3はJ1の下にあるリーグで、昇格・降格があるのでこの場合は一つのリーグの中にあるという数え方になる。ほかの国も同様だ。

 インドには、Iリーグというものがあり、これがFIFAが公認する唯一のインドにおけるプロリーグである。だが、いかんせん実力も人気もない弱小リーグである。

 一方で2013年に創設された「インド・スーパーリーグ」(ISL)は、外国人枠も拡大し、全世界から著名な選手・監督を引っ張ってきて、急速に人気を拡大した。そして2017-18はシーズンそのものが以前の三か月から五か月と長くなり、規模も確実に拡大した。

 カレン・ロバートが2016年に所属した「ノースイースト・ユナイテッド」や、筆者の盟友ランコ・ポポヴィッチが監督を務める「プネーFC」もこのISL所属だ。そして数年以内にIリーグとISLの統合が実現する予定となっている。カレン・ロバートが所属していた代理人事務所はインドに強いというのがウリの一つで、彼もそこを期待していた。

 そして8月に「ジャムシェードプール」というクラブの幹部会議が開かれ、そこでカレンとの契約が検討される、とこの代理人から聞かされていた。

 そして「忘れもしない」という8月11日がやってきた。

「代理人から“決まりました”という連絡があり、お金も悪くないし、やっと決まったかと家族とみんなで喜びました。ところがね、“紙”がこないんですよ」

 “紙”とは、言うまでもなく契約書である。もっとも、ISLといえば以前にもカレンに“紙”を送ってくるのが遅れ、チーム合流が開幕後までずれ込んだこともあった。

「以来フェイスブックでこのチームをフォローしていたのですが、どんどん外国人枠が埋まっていくんですよ。大丈夫かよ、と。八人の枠のうち、一気に七人決まりましたからね」

 ISLの特徴の一つは、外国人枠が通常より大きいことである。だが「紙」がないのだから、何の保証もないわけだ。不安にならないほうがおかしい。

「そんなとき、九月半ばくらいにインド側代理人からのメールを僕に転送してくれたんですよ。“ボビーとの契約について最終確認です”みたいな感じで金額も出ていますし、滞在先や航空券の話もありますし、保険やらボーナスの話もそこに書かれていました」

 実はこれが大きな落とし穴だった。次回は「インド側代理人から送られてきたメール」に仕掛けられた罠について掘り下げていく(続)

【タカ大丸】
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。
 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト

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