実際に、この研究の分担者としてプロジェクトに参加していた北海道大学の遠藤乾教授も、自身の
ブログにおいて“この研究プロジェクトは、若手研究者を育て、学術ネットワークを広げ、資料インフラを形作りました。ご迷惑になるかもしれませんので実名は記しませんが、Mさん、Tさん、Iさん、Hさんなどいまや学術界の中枢を担っておられる優秀な研究者を研究員等で採用し、博士号取得前後から就職までの(一般に若手にとって苦しい)時期に給料を出し、将来のキャリアにつなげる役割を果たし”たと語っている。
同様に、牟田一恵教授の研究「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」に至っては、6人の研究分担者を抱えて4年間行われたのだが金額的には1755万円と格段に低い。
敢えて比較させてもらえば、最近保守派論壇で活躍中の三浦瑠麗氏の場合は、「先進民主主義国における政軍関係。安全保障と民主主義の両立をめぐる理論と比較研究。」も2年で100万円、「「シビリアンの戦争」発生の条件-米・英・イスラエルの事例から」というテーマで2年で268万円、さらに「アジア主導のグローバリゼーション-アジア発多国籍企業はいかに世界を変えているか」も3年で468万円と、研究分担者なし、つまり三浦氏一人のプロジェクトとして考えれば、牟田一恵教授と比べても差があるとは思えない金額を支給されているのである。
にも関わらず、SNS上では有名無名を問わず、保守を自称するアカウントが総掛かりで、左派寄りの学者のみを標的にしてバッシングしているのである。
一方、同じく「総掛かりでバッシング」と似た構図の出来事が、まさに同じタイミングで起きている。それは、弁護士に対する不当な懲戒請求の濫発である。
そもそも弁護士への懲戒請求は、弁護士が不当な行為を働いた際に、誰もができるようになっている。請求を受けて弁護士会が調査をして不当な行為が認められた段階で処分が下る。いわば、真っ当な理由で弁護士に依頼した人が、不良弁護士から被害を受けた場合の救済システムである。
しかし、昨年秋くらいから、主に労働問題など左派寄りの弁護士や弁護士会を宛先として大量の懲戒請求が送られた。懲戒事由として、「違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同し、その活動を推進する行為」について犯罪行為だとしたものだった。
この懲戒請求については当然の如く懲戒事由に当たらないとして却下されたわけだが、この不当請求について損害賠償請求をすることに決めた弁護士の佐々木亮氏はこう語る。
「私自身は基本的に労働問題を扱う弁護士なので、朝鮮人学校の補助金などについて、公の場などで名前を出したこともないし発言していたこともないんです。では、なぜターゲットになっているのかと思ったら、どうやらネトウヨ本の版元で起きた労働事件を担当してたからではないかと思い当たったんです。この懲戒請求には2つの点があって、神原先生のように反レイシズム運動などで活動されていた先生に不当請求をする不当性と、もっとレベルが低い段階があって、それすらも言及していない弁護士を、自分たちが気に食わないというだけで懲戒請求をするというレベルの不当性があるんです」
そのメチャクチャな理屈は、佐々木弁護士の懲戒請求について「何で懲戒請求されているのか、ホント謎です。酷い話だ」とツイートしたことが脅迫罪にあたるとして今日行われたことからもよくわかるだろう。
あまりに酷い数の懲戒請求について、佐々木弁護士らは損害賠償請求訴訟を起こすことを決めた。また、同時期に、懲戒請求が送られた、反レイシズム関係の弁護を行なっていた神原元弁護士は佐々木氏らとは別にすでに損害賠償訴訟を起こしていたと発表した。
これらの話題がSNSで広く拡散し、大量の懲戒請求を送りつけるという「運動」の姿が明らかになったのである。