日本が北東アジア安全保障問題で主導権を握る起死回生の逆転策

足立力也
 4月27日の南北朝鮮トップ会談における「融和ムード」は、朝鮮半島情勢を一気に流動化させるほどのインパクトがあった。来たる米朝首脳会談は、その動きを加速させるだろう。そんな中、北東アジアで日本は「蚊帳の外」に置かれつつあると言われるが、今後どう対応すべきなのか。紛争解決学の観点から提言する。

板門店

南北首脳会談が行われた、軍事境界線上にある板門店

「日本外し」が、北東アジアの安全保障悪化のタネに

 南北朝鮮間のトップ会談は、当事者たちにとってほぼ100点と言ってもいい出来だった。長年争ってきたお隣の同族が和解へ向かうこと自体は、素直に喜ぶべきだ。一方で、一連のプロセスから日本が外されることは、北東アジア全体にとってもマイナスだろう。もしこの融和傾向がしばらく続くとすれば、日本と他の北東アジア諸国との関係性こそが、地域でもっとも深刻な不安定要素となりかねないからだ。

 日本と他の諸国との「戦後清算」の問題は、好むと好まざるとにかかわらず、これからも地域の議題に上る。それは、朝鮮半島だけでなく中台間の海峡も分断し続けてきた「冷戦」という構造がまだ続いている証でもある。そこから脱するためには、新たな地域構造を作らなければならない。

 北東アジア冷戦構造の象徴とも言える朝鮮半島の分断の「終わりの始まり」は、構造そのものを転換する絶好のチャンスでもある。それに失敗すれば、日本にとっては最大のピンチとなるだろう。それだけでなく「日本が北東アジア最大の不安定要素」となり、地域安全保障を悪化させている張本人にさせられてしまいかねないのだ。

 だから、それを避けるために日本が何らかの手を打つことは、日本だけでなく地域安全保障にとっても重要な鍵となる。では、どんな手を打てばいいのだろうか。

北東アジア安全保障の中心をウランバートルに置くべき5つの理由

スフバートル広場

モンゴルの首都ウランバートルの「スフバートル広場」にあるモンゴル政府宮殿

 米朝会談の候補地として、他の複数の場所とともにモンゴルの首都ウランバートルが挙げられていた。結局はシンガポールに決まったが、今後は朝鮮半島情勢も含めた北東アジア全体の安全保障問題を議論するラウンドテーブル(円卓)をウランバートルに置くのが望ましいと筆者は考える。それは、朝鮮半島の融和ムードを日本も含めた周辺諸国に広げるのにもっとも適しているからだ。

 主な理由は5つある。

①中立性を確保できること

 安全保障問題を解決する場は、「各紛争当事者から見て中立的な位置であること」が望ましい。シンガポールやジュネーブ、北欧などが米朝会談の場所の選択肢として挙げられたのは、その中立性が第一の理由だ。要は、会議に出てくる可能性のあるすべてのメンバーと等距離を保てることが重要となる。その点、モンゴルは北東アジアの中で周辺諸国との係争が(ないわけではないが)もっとも少なく、地域内の安全保障問題を冷静に話し合うのに適している。

②自分たちの地域の問題を自分たちで解決すること

 問題が起こるたびに地域外の中立的地域を選んで話し合っていたらきりがない。場合によっては、余計な手間をかけている間に問題が深刻化するかもしれない。しかも、地域の問題を話し合うのに第三者を巻き込んでしまう。それは、域内問題に域外の影響力を持ち込むことにもなりかねず、地域の不安定要因を増やすことにもなる。「自分(たち)のことは自分で決める」ためには、北東アジア地域内で中立地があればそこがもっとも適切だ。

 同じ地域であれば、紛争当事者も仲介者やホストも「向こう三軒両隣」の間柄として、域外の第三者より話しやすい。単純に、域内の国のほうが共有する意識、価値観、相互依存関係などが深いからだ。

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北東アジアにおける常設地域安全保障機構の必要性

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丸腰国家

コスタリカが中米という不安定な地域で軍隊を持たずにやってこられたのはなぜなのか?「理想」ではなく「現実」のもとに非武装を選択した丸腰国家コスタリカの実像に迫る。

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