離婚と差し押さえはセットで訪れる。その裏に泣く真の“被害者”の悲しみ <不動産執行人は見た2>

ニポポ
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破綻した結婚は、マイホームの差し押さえによって完全なる終焉を迎えるのである

 私の仕事は、不動産執行人である。

 離婚の原因は人それぞれだが、この仕事をしていると、離婚と不動産差し押さえはほぼセットなのではないかと確信せざるを得ない。月に数件も同じような事案があり、何度もデジャヴュに遭遇する。

“パターン”は端的に、離婚前後に家を出た元夫が、妻子の住処となった住宅ローンの支払いを放棄するというケース。

 字面だけ見ると元夫だけが悪者に見えてしまいがちだが、一概にそうとも言えない。

 このパターンに当てはまる物件は大抵築年数10年以内が多く、中には新築同然という物件も少なくない。

 同様に何故か当てはまりやすいのが、その新興住宅地で最も売り出し価格が安い物件であるということ。

 ゴミ集積場が設置されている、フラッグ形状地、日当たり問題、電柱や送電鉄塔の真横にあったり、水路に隣接しているなど何らかの悪条件を抱えている。

 この日の物件は最寄り駅から徒歩約20分、畑と古い家屋が目立つ地域にこつ然と現れる、可愛らしい洋風新興住宅地の一角。送電鉄塔によるデメリットと水路への隣接、日当たり問題、さらには飛び地という多くの不利な条件のある物件だった。

 このように自分たちの所得水準では少々高望みかなという住宅地が“たまたま安く手に入った”と喜び勇みやってきた途端に破滅というケースは珍しくない。

 理由は単純、余力がないからだ。

 余力がない状態で減給や離職、会社の倒産などが発生すると当然、歯車が回らなくなる。

 経済的な生活基盤の崩壊がまず招くのは、妻の精神的不安。生活基盤の多くを旦那に依存してきたのだから仕方のないことなのだろう。

 ここで「ごめん。こんな状況でしばらく迷惑かけるけど、家族一丸となってなんとか乗り切ろう」と言える夫を増やすことが出来たとしたら、また、ここで「私も頑張るから」と言える妻を増やすことが出来たとしたら、どれだけの家庭崩壊を救えたかわからない。

 だが残念ながら、多くの夫は家族に打ち明けられないまま抱え込み事態を悪化させ、発覚した段階で妻は「とにかく何とかしろ」と旦那にムチを振るう。

 なりたくてこうなったわけではない夫はやがて疲弊し、立ち上がれなくなる。そうなると妻は新たな依存先として実家に救いを求め、何とか経済的基盤を回復。居場所のなくなった夫は姿を消し、その前後に協議離婚が成立する。

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物件に残る、真の“被害者”の悲しみの痕跡

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