強行採決されそうな「高度プロフェッショナル制度」は、一億総ブラック企業従業員にする欠陥制度

bee/PIXTA

 ついに高度プロフェッショナル制度(=高プロ)を含む「働き方改革」関連法案が一気に強行採決される可能性が高まってきた。 「成果に応じた賃金がもらえる制度」や「柔軟な働き方が可能になる」といった美辞麗句から、「年収1075万円以上の労働者が対応」と、さも一般のサラリーマンには無関係かのような報道が多かったせいで、いまだに誤解している人が多いが、この「高プロ制」、サラリーマンとして働く人ならば誰もが適用範囲になり、今までは労働基準法で規制されてきたさまざまな「労働者保護」がすべて無視して、経営者のやり放題で馬車馬のようにこき使えるようになる極めて危険な制度であることがまったく認識されていない。  ブラック企業被害対策弁護団代表として、常に労働者側にたった弁護活動を行っている弁護士の佐々木亮氏(Twitter ID:@ssk_ryo)に話を聞いた。

成果に応じた賃金体系など微塵も書かれていない

「法案の中身を見てもらえば一目瞭然なのですが、この条文案の中に成果に応じて賃金を払うということは一切言及されていません。というより、賃金体系自体に言及がない。しかし、当初は多くのメディアが、あたかも成果に応じて賃金を払う制度であるかのように報じてきました。これは、メディアが官僚からの記者レクをそのまま鵜呑みにして垂れ流しただけなのが原因ではないかと思います。 ちなみに、朝日新聞や東京新聞、あるいはサンケイビズや日本テレビは当初から比較的正確に報じていましたが、それ以外の主要メディアの多くは『成果型労働』や『成果で評価する』などという、法案読んでないだろ! と突っ込みたくなるような報道を続けていました。さすがに今年3月の時点で、そのような報じ方をするメディアの数は減り、日本経済新聞以外は正確に報じるようになりましたが、日経新聞はもはや意地としか思えないほどこの表現に固執していました」  このように「成果に応じた賃金をもらえるようになるからいいではないか」というような声は、佐々木氏のTwitterにも数多く寄せられるそうだが、一度法案全文にくまなく目を通して欲しいという。 (参照:法案佐々木氏による法案全文解説)  しかし、問題はそうした誤解だけに留まらない。もっとサラリーマンの労働環境を大きく悪化させることになりかねないのだという。
次のページ
何時間でも働かせ放題に!
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会