大同江ビールは、故金正日総書記が「人民に良質なビールを届けたい」との号令でプロジェクトがスタート。イギリスで廃業したビール工場の設備を買い取り、平壌へ移設し2002年4月から生産が始まる。
ビールを生産するにあたり工場責任者がイギリスやドイツ、中国などへ研修へ出かけ学んでいる。そのときに世界中で飲まれている著名なビールも徹底研究して負けないビールの味を追求したという。
中国では青島ビールで研修した影響か大同江ビールの瓶は青島ビールの瓶に似ており、色も日本では見かけない緑色をしている。
また味は、原材料の生産地などを変え年々変化をしており、毎年飲んでも味の違いを楽しむことができる。2、3年前と比べヨレヨレだったラベルもスマートになりしっかりと貼られているなど着実な進化を遂げている。
現在、主に中国へ輸出されているのは2号と呼ばれる種類で、一部1号ビールも入ってきているが、北朝鮮本国では大同江ビールは黒ビールやハーフアンドハーフも含め7種類存在し、それぞれを生ビールで飲むことができる。
北朝鮮が大同江ビールへ力を入れていることを示すものとして2009年「平壌の自慢『大同江ビール』」として同国初のテレビCMとなったことからも分かる。
以前、中国朝鮮族から聞いた話で、80年代後半に平壌で大学教授をしている親戚が吉林省を訪ねてきたときにビールで乾杯したら一口飲んでポロポロと泣き出したという。どうしたのかと尋ねると、その大学教授は生まれて初めてビールを飲んでその美味さに感動したとという。
30年ほど前だと大学教授でも高嶺の花どころか飲んだことがなかったビール。今でも一般の北朝鮮人が毎日飲めるものではない高級品とされている。生産している地元北朝鮮人も飲めないビールを外国人がガバガバ飲んでいると思うとやや忍びない思いもしてしまう。
ちなみに今回の試飲会で使わせてもらったのはネパールカレーの店。店では、タイガービール(シンガポール)や333ビール(ベトナム)、シンハービール(タイ)、サンミゲルビール(フィリピン)などアジア各国を代表するビールが置かれている。ビール好きのネパール人の店長にも試飲してもらったら、「あれ? 普通に飲める(笑)。各国のビールと勝負できる味ですね」とネパール人もビックリだったようだ。
最後に繰り返すが大同江ビールを含め北朝鮮製品を日本へ持ち込むとすべて没収対象となるのでくれぐれもご注意を。
<取材・文/中野鷹(TwitterID=
@you_nakano2017)>