この「ドルイドキング」の起訴が、思わぬ余波をもたらした。
世論操作のネタとなった記事を掲載していた、韓国最大手のインターネット検索ポータルサイト「NAVER」が、この事件の元凶だとして批判を浴びはじめた。
IT・コミュニケーションの専門家らは、NAVERがマクロプログラムを見抜けないわけがなく、知りながら放置・黙認していた可能性を指摘したのだ。もし、NAVER側が見抜けなかったと否定するのであれば、それはそれでセキュリティの脆弱さを露呈することになる。
ソウル大学言論情報学科のハン・ギュソッ教授は、「最も急いで議論しなければならない対処法は、NAVERの記事に、コメントをつけられないようにすることだ。(中略)コメントは単なる意見の表れではない。コメント数によって記事のアクセスランキングが決まり、トレンドになってしまう。そうすることによって、閲覧数やコメント欲しさにめちゃくちゃな記事が量産されるようになってしまう」と指摘した。
今やツイッターやFacebookといったSNSは、政治をもつき動かす一種の手段となっている。
SNS世論の危うさは、実体のない「共感」が一気に膨らみ、どんどん増長されていくことだ。
多くの国民がコメントをよせているニュースを見ると、もはやその情報が事実かどうかは重要ではない。それよりもコメント欄で大衆が突きつける是非に、自身が共感出来るか出来ないか。これに尽きる。
したがって、ドルイドキングのように、たくさんのアカウントを所持し、自作自演を繰り返すことで、虚偽の情報はいつの間にか「真実」となり、SNS世論はいとも簡単に作り出されてしまう。
そして、今回の「ドルイドキング」によって印象を捏造されたと主張する人物がいる。
6月13日に行われるソウル市長選挙に立候補している、安哲秀(アン・チョルス)氏だ。ちなみに安氏は、昨年5月に行われた韓国大統領選挙にも立候補している。
安氏によると、「ドルイドキング」らが手当たり次第に広めたコメントや書き込みには、「安哲秀は社会不適合者で、裏切り者。金目当ての人間」、「安哲秀の愛人は、江南(カンナム)や木洞(モクトン)にもいる」など、誹謗中傷が相次いでいる。
安氏は「政治活動をしてきたこの7年は、常に工作されたネットの攻撃や、世論操作と戦ってきた」と話す。また、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が当選した昨年の大統領選挙においても、「ドルイドキング」による世論操作はあったとして、検察による捜査を要求している。
「文大統領が、昨年の大統領選挙候補時に『ドルイドキング』に会った事実はないか?」
「いいね」欲しさに偽造した「世論」は、新たな火種を生んでいる。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>