そのスウェーデンもロシアからの脅威を感じて防衛力の強化に向かっている。
昨年9月に今年の防衛費を5%増加することを決めている。60年代は国防費はGDPの3.5%であったが、2016年には1%まで減少していたにも関わらず、である。その背景には、急激に増加しているロシアからの脅威がある。
まずは防衛力の強化として13億ドル(1400億円)を投じてパトリオットを配備することになっているという。(参照:「
Actuall」)
既にスウェーデンは、2009年頃から中立を保つ姿勢に疑問が投げかけられるようになっていたが、昨年ついにNATO軍が国内に入国できることを容認した。その一貫から「Aurora17」と呼ばれたNATOの軍事演習が行われた。この演習に参加した兵士は1万9000人。参加国はノルウェー、フィンランド、デンマーク、エストニア、レトニア、リトアニア、フランス、米国そしてスウェーデンであった。
この軍事演習はロシアの止む事のない軍事演習を意識したものだとされている。一番最近のロシアの軍事演習「Zapad17」では10万人の兵士を動員して実施されている。
スウェーデンはバルト海の中間に位置し、またカリーニングラードから300キロ離れたゴットランド島に常時兵士を駐留させることを決めて、350人の兵士が現在駐留して特にカリーニングラードからの動きを監視している。
更に、スェーデン政府は5月末に470万世帯を対象に分かり易くイラストを多く挿入した小冊子を配布して、その中で戦争が起きた時にどのように対処すべきかを説明するとしている。このようなガイドブックを最初に配布したのは1943年だというが、最近の同国はロシアとの戦争が起きる可能性はあると推測するまでになっているのである。(参照:「
El Confidencial」)
更に今年から徴兵制を復活して、18歳以上を対象に4000人の若者が毎年招集されることになっている。(参照:「
El Confidencial」)
デンマークも防衛強化に向かっている。2024年までに17億2000万ユーロ(2240億円)を投入することによってNATOの規定であるGDPの2%を満たすことになるとしている。デンマークはこの3か国の中で唯一NATO加盟国である。更に4000人の即応部隊も用意するとしている。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。