「ハイブリッド戦争」の巧者、ロシアの脅威増大で北欧三国で高まる警戒感

白石和幸

NASA/GSFC/LaRC/JPL, MISR Team

 最近の北欧3か国(フィンランド、スウェーデン、デンマーク)はロシアからの脅威に備えて、特に1340kmのロシアとの国境を接するフィンランドはNATOへの加盟も考えているという。また、スウェーデンとデンマークは軍事費拡大を検討している。

フェイクニュースによる情報撹乱で高まるロシアの脅威

 北欧3カ国でロシアからの脅威が増す要因となったのは、ロシアがクリミアを併合したことと、米国がトランプ大統領になってロシアを時に挑発する姿勢を示すようになっているからである。その上、ロシアの戦闘機がこの3か国の領空近くを飛行したり、2014年にはスウェーデンの領海にロシアの潜水艦が侵入したと思われる出来事もあった。

 フィンランドはロシアとの貿易取引は盛んで、ロシアを挑発する姿勢はこれまで避けて来た。しかし、ウクライナ紛争やクリミア併合、さらにはバルト海を挟んで対岸に位置するロシアの飛び地カリーニングラードで、ミサイル「イスカンデル」や「S-400」を配備して武装力の強化を図っているといったことが北欧3か国にとってより脅威になりつつある。

 更に、ロシアはクリミア併合で見せたように「ハイブリッド戦争」の先駆者的な国で、その体制を更に強化させている。

 ハイブリッド戦争とは、情報攻撃を軍事力の中に組み込んで敵を攪乱させることだ。情報攻撃で一番の具体例は大量のフェイクニュースを流して敵国の世論を操作したり、そして自国民まで騙して目的を達成することである。ロシアの電子紙『Sputnik』はそれを可能にする媒体のひとつだとされている。

「NATO」加盟の選択肢も浮上したフィンランド

 フィンランドは1994年からNATOの「平和のためのパートナーシップ協定(PfP)」に参加している。しかし、ロシアとの関係を重視してNATOへの加盟はタブーとされている。しかし、再選されたニーニスト大統領はこれまでの中立政策を維持するとしながらも、最近はNATOへの加盟への支持を表明する動きを見せるようになっている。実際、フィンランドの大統領として初めてNATOの本部も訪問した。

 また、2020年から国防費をGDPの2%にまで上げることになっている。更に、100億ユーロ(1兆3000億円)を投じて64機の戦闘機を刷新することがフィンランド国営放送YLEにて明らかにされている。同様に、戦車レオパルド100台と自走榴弾砲K9サンダーも48台が加えられることになっていると報じられた。(参照:「El Confidencial」)

 更に戦力強化で7億3400万ドル(793億円)の予算を投入して艦対空ミサイルESSMや対艦ミサイルハープーン(Harpoon)などを自国の戦艦に装備することになっている。(参照:「Defensa」)

 同様に非常に長い国境を強化する意味で、ロシアからの「ハイブリッド攻撃」に備えて国境警備隊を強化してドローンを撃墜、不審な情報の抹消、通信網の封鎖などを警備隊独自で迅速に決定できる体制にするための法の改正も予定されているという。

 昨年8月には外国からの傭兵でも身元不明の場合は入国させないということも法的に決まっている。これはクリミアに潜入していた身元を明かさなかったロシア兵のことを示唆して入国を拒否できることを法制化したものだ。

 さらに、フィンランドと同様にロシアを刺激させないためにNATOに加盟していないスウェーデンとは2013年に双方で軍事協定を結んでいる。

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NATO軍の入国を容認したスウェーデン

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