仮想通貨市場を再び“亡霊”が襲う!? 破綻した「Mt.GOX」がいまだに仮想通貨市場を揺るがす理由
仮想通貨市場を再び“亡霊”が襲おうとしているのか? 破産処理中の仮想通貨取引所「Mt.GOX」(マウントゴックス)保有のビットコイン(BTC)が、4月26日に再び大量送金されていることがわかったのだ。その数、約1万6000BTC。金額にしてザッと150億円相当だ。これだけのビットコインが取引所を通じて一気に売却されようものなら、急落は避けられない。実際、直前に100万円の大台を回復していたビットコインは26日にかけて90万円前半まで下げたのだ。
その背景を知るために、GOXショックを振り返っておこう。
当時、世界最大の取引所として人気を博したマウントゴックスが破綻したのは’14年2月のことだった。ハッキング被害に遭って計85万BTCが「いなくなった」とマルク・カルプレス社長が釈明したことをご記憶の人も多いだろう。その損害をカバーできぬまま、同社は経営破綻。’13年12月に15万円の高値をつけたビットコイン価格は、GOXショックを受けて3万円台まで急落した。
同年3月には「別のウォレットから20万BTCが発見された」と発表されたが、その5か月後には事件が急展開。カルプレス氏が自身の口座残高を不正に操作した私電磁的記録不正作出容疑で逮捕されたのだ。さらに警視庁は業務上横領容疑で再逮捕。ハッキング被害を自作自演した疑いが、カルプレス氏にかけられた。
それから3年を経て、マウントゴックスは再びクローズアップされる。’17年7月に米検察当局が40億ドル以上のマネーロンダリングに関与したとして、ビットコイン取引所「BTC-e」の運営者とされるアレクサンダー・ビニック容疑者を逮捕・起訴。取り調べのなかで、マウントゴックスから大量のビットコインがBTC-eに送られていたことが判明し、ビニック容疑者がマウントゴック事件にも関与していた疑いが急浮上したのだ。
そして今年3月、またもやマウントゴックスからショッキングなニュースがもたらされることに……。ご存じ、大量のビットコイン売りだ。3月7日にマウントゴックスの破産管財人・小林信明弁護士が東京地裁に提出した資料から、430億円相当のBTCとBCH(ビットコイン・キャッシュ)を売却していたことが明らかになったのだ。
米大手掲示板サイト「reddit」上では、マウントゴックス・ウォッチャーらが、絶えず破産管財人のものと思しきウォレットを監視してきた。そのウォレットの出金履歴をもとに、おおよその売却時期をチャートに落とし込んだのものを作成した。売却後にビットコイン価格が急落しているのがわかるものだ。これによって、マウントゴックスの亡霊が相場急落の引き金をひいたとして、小林弁護士に批判が集中する騒動に発展したのだ。
なぜなら、2万5000人にも達する債権者の多くは「ビットコインでの配当」を希望し、当初は小林弁護士も債権者集会でその希望に沿うよう努力するという趣旨の発言をしていた。要は、債権者の意に反する売却だったのだ。だが、破産法上、ビットコインでの配当は難しい。西村あさひ法律事務所の福岡真之介弁護士が話す。
「もともと明治に制定された法律をベースにしているので、現金以外の配当を前提にしていません。ビットコインは仮想通貨と言われますが、日本の法律上は“現金”ではないという扱いなので、破産処理を進めるうえでは売却して現金化して行かざるをえないのです」
ただし、マウントゴックスには“特殊すぎる”事情がある。現在、破産管財人が認めている負債総額は約456億円だが、ビットコインの価格が急騰したため、直近のマウントゴックスの保有資産は1800億円以上(売却後の残り約16万BTCとBCHを1BTC=100万円、1BCH=15万円で計算)に達している。債務超過に陥って破綻したにもかかわらず、今では大幅な資産超過の状態にあるのだ。
マウントゴックスを巡る波乱の動き
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