この現象の影響で地元の住民以外に被害を受けている人は、スペインの他の地方から事情があってパルマ市に長期住まねばならなくなっている人たちが住める適当なマンションが見つからないという問題である。しかも、仮にあっても賃貸料が割高になっているといった問題に直面している。賃貸マンションの需要過多で、この2~3年で料金は40%の値上がりをしているという。(参照:「
Voz Populi」)
外国からの観光客ではなく、今年に入って新たに加わったEUからの長期滞在者は2690人、EU以外からは3374人、そしてスペイン人は191人となっている。スペイン人の場合、昨年は2738人であったそうだ。(参照:「
Diario de Mallorca」)
そこで、3政党が連携した市政府は4月の議会で7月よりマンションを観光客用に貸すことを全面的に禁止することを決議したのである。その例外として、一戸建ての家の場合は貸すことが出来るとしたのである。一戸建ての場合は隣人などに迷惑を及ぼすことは少ないと見たわけである。但し、工場団地、歴史地区、空港に関係した場所はこの例に当てはならないとした。パルマ市内には一戸建ての建物は2万3000戸あるという。それは市内にある全建物18万戸の12%に相当する戸数だそうだ。(参照:「
ABC」)
一方、この決定に反対しているのが地元の商店である。マンションの観光客への賃貸禁止で滞在する観光客が大幅に減少して売上が減少すると懸念しているからである。更に、不満はパルマ・デ・マジョルカ島のパルマ市内では禁止となったが、同じ島内の他の都市ではそれが禁止となっておらず、不公平だと彼らは表明している。
今回のパルマ市役所の決定はスペインで初めてのケースである。バルセロナも同様の問題を抱えているが、市政に政党間の争いで統一性を欠いており、この様な決定に漕ぎつけることは容易でない。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。