アパホテルに置かれた本をアメリカ人男性が読んでみた

炎上騒動も知らなかった

 一連のオモテナシにやや面食らった様子のJさん。「この国では毎日新しくて面白いことが学べるね」と冗談めかしていたが、後日直接会って感想を聞いてみた。 「何回も泊まっていたけど、本には一度も気づかなかったし、炎上騒動が起きていたことも知らなかった。こっそり置いてあるのは気持ち悪い。もし知っていたら、間違いなく泊まらなかったね。内容もデタラメだし、そもそもあんな本がホテルに置いてあることがおかしいよ。主義主張は勝手だけど、それをお客さんに押しつけるのはダメだと思う」  なかなか気づかなかったというぐらいなので、「押しつける」というのは言い過ぎかもしれないが、目立たないだけに本を見つけたときの衝撃は大きかったようだ。また、事前にグループ代表の主張を知っていたら泊まらなかったというコメントも印象的だ。どういった人物が経営しているのかというバックグラウンドも、消費者が何かを選ぶうえでは重要なようで、こういった面に関しては日本人よりも外国人のほうが敏感なのかもしれない。  また、日本は“公の場で政治の話をするのは御法度”というイメージが強いわりに、安らぎの空間に政治的な本が置いてあることもショックを受けた要因なのだという。  とはいえ、宿泊客は後を絶たず。昨年11月期には売上高が1000億円を超えるなど、アパグループが好調なことには変わりがない。また、同グループが主催する「アパ日本再興大賞」は、なんと内閣府より公益目的事業の認定を受けたのだという。こうした本や論文について、国のお墨付きどころか「支援」を得たのだから、ますます増加していく可能性もあるだろう。  ゴールデンウィークで賑わう今も、多くの外国人の利用者がいるはずだ。どれだけの人が本に気づくのか? また、はたして彼らが本を見つけたとき、どう思うのか? Jさんからのメッセージが届いて以降、ついそんなことが気になってしまう。 <取材・文/林泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会