アパホテルに置かれた本をアメリカ人男性が読んでみた

「なかなかいい料金だったから、アパホテルに泊まることにしたんだけど、部屋に妙な本があって……」
本当の日本の歴史

アメリカ人男性が驚いた本の内容とは

 そう筆者に相談してきたのは、日本在住のアメリカ人男性Jさん。アパートの契約更新で、一時的にアパホテルで過ごすことになった彼は、困惑した様子で『本当の日本の歴史 理論 近現代史学Ⅲ』と書かれた本の表紙をメールで送ってきた。

「何度も泊まっていたけど気づかなかった」

 実はこの本、アパグループ代表の元谷外志雄氏が、藤誠志のペンネームで書いたエッセイをまとめたもの。アパグループのリリースによれば、「特定の国や国民を批判することを目的としたものではなく、あくまで事実に基づいて本当の歴史を知ることを目的としたもの」だそうだ。昨年1月には、同シリーズの2作目が南京事件を否定しているとして、米国人女子大学生Katさんと中国人男子大学生Sidが告発動画を中国のSNS「微博」に投稿。2日で6800万も再生されるなど炎上したことは記憶に新しいだろう。(参照:「ITmedia news」)  Jさんから「ナショナリストのプロパガンダだ」という穏やかでないメッセージが送られてきたので、筆者もすぐに炎上騒動を思い出した。しかし、Jさんが気になったのは南京大虐殺ではなく、他の部分だったようだ。 「『理想主義的な世界観を捨てて、レーザー砲を開発するべき』だって? イカれてるよ。しかも、アメリカが帝国主義だっていう内容なのに、なんでわざわざ英語で書かれているんだろう?」  同著は片面が日本語、反対側が英語になっており、すぐに該当部分の日本語版の写真が送られてきた。見るとたしかに、戦争抑止力として最先端科学兵器のレールガンやレーザー砲の開発を進めるべきだ、という内容が記されている。内容の是非はともかく、たしかにホテルに置いてあったら戸惑ってしまうのも仕方ないだろう。 「これまでも何度かアパホテルには泊まったことがあるけど、せいぜい聖書や仏教関連の本があったぐらいで、こんな本が置いてあることには気づかなかったよ。そもそも、ホテルに政治的な内容の本があること自体にビックリした」  そうJさんが語るように、グループ代表の政治的主張やそれをまとめた本など、知らずに泊まっている人がほとんどだろう。実際、新宿エリアのアパホテルを数軒回ってみたが、炎上騒動があったにも関わらず、中国語で談笑する宿泊客は数多く見られた。  そのほかにも、Jさんからは立て続けにアパホテルについてのメッセージが届いた。新居が決まるまでホテルをハシゴする生活を続けているが、よほど印象に残ったようだ。
メッセージ

せっかくの「オモテナシ」も、皮肉のこもったメッセージが送られてきた

ウェルカムドリンクでストロング系チューハイを勧められたんだけど、“本の内容”が入りやすくなるように配ってるのかな? ずっと日本語で話していたのに、そこだけ英語で『これは日本のスペシャルなお酒です』って自慢げに説明されたよ」  なかなかユニークなおもてなしだが、残念ながら、Jさんは断酒中で断ってしまったそう。勧めてきた従業員は「でも、スペシャルなんですよ……」と少し残念そうにしていたという。
次のページ
知っていたら泊まらなかった
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会