中国が抜け目のない相手だと見られているのは、中央ヨーロッパから東欧にまで進出の対象にしているからである。
「フォーラム16+1」というプラットフォームをご存知だろうか? これは、中国と16か国を囲んで経済協力と商取引を発展させていくというもので、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、スロベニア、エストニア、レトニア、リトアニア、クロアチア、セルビア、ボスニアヘルツェゴビナ、モンテネグロ、アルバニア、マケドニアの16か国が参加している。中国の狙いはその中で興味のある企業を買収或いは投資参加ということである。
このフォーラムをベースに、中国の李克強首相は、中央ヨーロッパと東欧を対象に、新たな投資として26億ユーロ(3380億円)を見込んでいることを2071年11月に語っている。東欧は物価も西欧に比べ安く、企業価値もその分、低くなっているので、中国にとって投資額も少なくて済むというわけだ。
また食糧を確保する必要のある中国は、2013年にウクライナで穀物の栽培や豚の牧畜を行う目的で300万ヘクタールを50年間借りる地元民の猛烈な反対を押し切って契約をしている。食料生産地としてだけではない。中国はウクライナをシルクロードのヨーロッパに入るひとつの玄関として考えているのだ。(参照:「
REVISTA RAMBLA」)
また異質な投資として中国はヨーロッパのサッカーチームの買収も行ている。既に3のチームに中国の企業資本が投入されている。具体的に名を挙げると、英国アストン・ヴィラFCやイタリアACミランのように100%中国資本によって買収されている場合や、株主としてインテル・デ・ミラン70%、アトゥレティコ・デ・マドリード20%、マンチェスター・ユナイテッド13%と、それぞれ中国資本が投入されているのだ。
中国がヨーロッパのサッカーチームへの投資に関心があるのは、一つにはそれをビジネスにして投資することだが、それ以外に、中国のサッカーレベルを上げる為と各チームの地元に中国へのイメージについてより親近感を持ってもらいたいという意向からである。(参照:「
El Economista」、「
La Informacion」)
EUの企業は成長せねばならない。それには資金が必要だ。その資金はいま、中国にある。そして、巨大な中国市場は無視できない。そのため、中国資本の導入も必要だ。このような事情がある限り、中国のEUへの進出は留まることがない。
<文/白石和幸 photo by
Friends of Europe via flickr (CC BY 2.0) >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。