どこに勤めてもクビだったアスペルガーの女性が、年商1億円社長になるまで<1>

和場まさみ

どこに行っても空気が読めず、追い出される。ついに引きこもるようになり……

 学生時代は人付き合いが苦手なコミュ障のせいで友達がいないこと、虚弱体質であること以外に、あまり問題はなかった。友達には嫌われていたが、そもそも関わりたいという気持ちがないので淋しいとも感じなかった。

 しかし、社会人ともなればそうもいかない。

 国立大学在学中に北京へ語学留学。生来聴覚が優れているため、流暢な北京語を習得。IQも高く成績優秀。大学卒業後は晴れて中堅輸送会社を経てステップアップし、大手の外資系企業に就職した。

「とにかく思ったことはすべて口にする、嘘がつけない、虚弱体質。これらはすべてアスペの個性。それがいきなり爆発して、制服を着用する意味がわからないからと私服で通したり、仕事で男女差があるのはおかしいと上司に意見したり、体調不良で遅刻欠勤の日数が規定を超えたり…入社直後からこんな感じなのですから、いま思えば会社側も大変だったでしょうね」

 まさにコミュ障全開。一社目の輸送会社は一年未満でクビになってしまった。

 続いて就職した二社目では、中国語の語学力を買われて貿易事務の専門職に。

「貿易事務は書類作成が主な仕事ですが、スペルミスひとつで数十万円の罰金や数億円の損害を与えてしまうという厳しい世界。ところがまず、規定の用紙の枠内に文字を納めて書くことができない。当時はタイプライターの時代でしたが、スペルミスが非常に多く、結果として会社に大損害を与えてしまったんです」

 やがてアズ氏のデスクは倉庫に移され、職場の人間からも陰湿ないじめを受けるようになり、この会社も一年で退職することになってしまう。

 続いて就職したのはベンチャー企業。ここでは、あっという間に業績を伸ばし、トップに近い立場まで昇りつめたのだが……

「今度は部下の若者たちやアルバイトの人たちから、振り回され過ぎてついていけないと散々文句を言われ、やはり一年余りでクビになりました」

 さすがに三度もクビになると、原因は自分にあるのではないかと考え始めた。

「言動はアグレッシブでも常に体調は悪い、しかもメンタル面も潰れてしまってその頃からうつ症状やパニック障害が起こり始めました」

 当時のアズ氏は、自分がアスペルガー症候群であることを知らなかった。心療内科に通院を始めるが、それでも気づいてもらえなかったのは、発達障害に対する認識がその頃の日本ではまったく広まっていなかったからだろう。

「アスペルガーの人はストレスを溜めやすく、二次障害としてうつ症状を起こす可能性が高い。私はとうとう電車に乗ることもできなくなって、自宅に引きこもるようになってしまいました」(続)

<文・和場まさみ/構成・安英玉(HBO編集部)>

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