「まだ一部だけがこの車に変わって、いま乗っているのは、社内でも優良ドライバーだけなんだけどさ、優良ドライバーになる運転手ってのは基本的に会社に文句をいうようなタイプじゃないからってのもあって、大きな不満は出ていないけど、癖のある連中も乗るようになったら凄い文句出ると思うよ」と、語ってくれたのは、ドライバー歴20年になる某社のAさん。
「なにしろ、まず出足がもっさりしているんだよ。さっきの加速も見たでしょ? 音だけ大きい割に全然進まないの」
なるほど、コンフォートが最高出力83kw(113ps)/4,800r.p.mで、最大トルク186N・m(19.0kgf・m)/3600r.p.m.なのと比較すると、ジャパンタクシーが最高出力54kw(74ps)/4,800r.p.m、最大トルク111N・m(11.3kgf・m)/2800~4400r.p.mで、車重についてはジャパンタクシーが10~20kgほど重いので、ざっくり言えばAさんの感想もむべなるかなと言ったところだろう。
また、別のタクシー会社のBさんはこう語る。
「後部のスライドドアがさ、開くの遅いんだよ! 交通量の多い通りで停車してお客さんを乗せるときなんかこっちがヤキモキしちゃうし、お客さんだて急いでいる人もいらっしゃるから、“開くの遅いね”って言われるよ。あとね、後の窓、左側も半分までしか下がらないし、右側に至っては開かないのよ。これは評判悪いね、お客さんから」
また、独特のフォルムも従来車に乗り慣れたドライバーからは評判がよろしくない。
「例えば、あの有名な泉岳寺の低い高架下通路あるでしょ。あそこなんか通れないからね。都内でも数箇所、前のコンフォートで通れた抜け道が通れなくなってるよ。あとはね、仕事的なことを言うと、まだ認知度が低いのかタクシーだと思われなくてお客さんに気付かれないで後の従来車停められちゃう(笑)」(Aさん)
車椅子でも大丈夫というユニバーサルデザインにも不満が出てくる。
「慣れてないってのもあるんだろうけどさ、シートアレンジを変えて、スロープ付けて車椅子を乗せて、固定ベルトを手動でかけて……って、載せる準備するだけで20分以上かかっちゃうんだよ。車内に載せる補助スロープもいちいち車内から出して、終わったら畳んで収納ってのをしないといけないの。せめて床下に格納されてすぐ引き出せる作りならいいんだけどね。
歩道があるところや幅が広い道ならいいけど、狭い住宅地の道だと横から入れるのも難しいかもしれない。普通、介護サービスの車って、車椅子は後から載せるようになってるじゃない。後からそのまま入れれば中で車椅子を回さなくても前向きに入れられるけど、これはサイドのドアから入れて、車内で前向きに直さないといけないんだよ。
中にターンテーブル状の回転できる設備があるとか、せめてトランク側からそのまま乗れるようにもなってりゃいいのになぁ」(別の会社のドライバー、Cさん)
もちろん、従来車種よりはずっと乗りやすいのだろうが、現場で実際に対応するドライバーや、介護者からすれば不満な点も多いようだ。
「お客さんも珍しがってくれるし、車内の広さは評判いいんだけど、ドライバーからすると天下のトヨタならなぜそこやってくれなかったの? って思うところが結構あるんだよねぇ」(Bさん)
2020年までにはもっと増え、日本の街の景色を変えるかもしれないジャパンタクシー。運転手さんが慣れるのが先か、欠点が改善されるのが先か、気になるところである。
<取材・文/HBO編集部 photo by
Ypy31 via Wikimedia Commons(Public Domain)>