深夜便での海外出張は、深夜残業にあたるか?!

 通常の海外出張規定には、ここまで細部の取り決めはされておらず、個別の状況をふまえて個別に取り決めをするという取り扱いをしていることが一般的です。業務の延長線上にあるか、業務の実態があるかどうかで、個別に判断する余地があるということです。  実際には、この問い合わせを契機にして、出張で深夜移動をする場合には、健康維持の観点から、有給の特別休暇を取得するという労使の取り決めをしました。

出張手配担当者と部門と人事の間で放置されがちな問題

 今回、相談のあったケースで、一括して出張手配をしている担当者の人に、ほぼ全員が深夜便で移動していることについて、社員から懸念の表明や、日中の便への変更依頼などがありませんかと、穏やかに聞いてみました。  その答えは、「時々懸念の表明や変更依頼がありますが、例外なく、最短、最安値で手配することになっているので、問題ありません」とのことでした。社員の体調管理などについて気になりませんかと聞きましたら、「それは出張手配担当が心配することではなく、人事部や所属部門でケアすることだと思います」という回答が返ってきました。  人事部に聞きましたら、出張手配は出張手配担当者にまかせているという見解で、部門長に聞きましたらそれは人事や出張手配担当にケアしてもらわないと…というように三者の間に三遊間の球がころがってしまっている問題でもありました。  昨今、ビジネスのグローバル化が急速に進み、海外出張するケースも各段に増えてきましたので、規定や取り扱いの整備や改善に注力している企業も少なくありません。もしかしたら、今後の判例は、社員の健康維持の観点により立ったものなるかもしれません。  しかし、実態は、当事者である出張する社員が一番をわかっているわけですから、海外出張の機会が多い人や、これから多くなりそうな人は、手間だと思うかもしれませんし、煩わしいと思うかもしれませんが、出張する前に自分で疑問点をクリアにしておくことをお勧めします。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第79回】 【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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