深夜便での海外出張は、深夜残業にあたるか?!
すでに裁量労働制で働く人も騙されちゃダメ! 裁量労働制にまつわる6つの誤解」、「残業圧縮のために推奨される早朝出勤。これって残業代は支給される!?」今回は同様に問い合わせを受けることが多い、出張の取り扱いを取り上げたいと思います。
さて、それでは深夜便での出張移動は深夜残業手当の対象になるかということですが、深夜残業手当の対象にならないということが一般的な取り扱いです。移動時間は必ずしも業務をしなければならないということではなく、業務による拘束性がないので、勤務とは認められないという判例があります。
しかし、実はこのケースでは、考慮しなければならない点が、いくつかあるように私には思えます。まず、深夜便に搭乗するために、会社で勤務したまま、空港へ移動し、そのまま搭乗しました。自宅から直行したケースに比べて、業務の連続性は高いといえます。
例えば、オフィスから30分程度離れた取引先へ移動し、商談し、取引先からオフィスへ戻ってきた場合、移動時間は勤務時間です。ほぼすべての企業で、勤務時間の取り扱いをしており、移動時間を別にトラッキングして、その時間は勤務時間から除外する取り扱いをしている会社はないと思います。しかし、自宅から取引先へ直行する場合は、取引先に到着してから業務時間が開始するとみなすわけです。この考え方と同じです。
また、上司や同僚と同じ便で、座席は多少離れていたそうですが、空港へ行く途中や、空港に着いてから、そして機内に入ってからもシンガポールでの実施することについて会話をしたそうです。
もちろん、空路の全ての時間、絶えず打ち合わせをしていたということはないので、拘束性は低いわけですが、上司と同行して出張移動した場合、業務の実態はある程度あったと言えます。
人事部長や人事関連のコンサルタントとして私がサポート先の企業から受けた質問の中で、最も印象的だったのは、グローバル企業T社の若手社員から受けた次の質問です。
「シンガポールへ出張するのに、深夜便で行けと言われました。到着したその日の朝から仕事をしなければなりません。この出張移動に深夜残業手当は支給されるでしょうか」というものです。
確かに東京・シンガポール便、シンガポール・東京便は、約半数が夜に出発して朝到着する深夜便です。この会社では、海外出張が多いので、出張手配業務を一元化し、社員個人が自分で航空券に予約することをせず、社員から担当者へ出張手配依頼をし、その担当者が一括して旅行代理店へ依頼して手配していました。
聞いてみると、担当者は、最も短時間で出張できる日程で、最も安い航空券を手配するように財務経理部門から指示されているそうです。そして、それを忠実に実施していたので、多くの社員がシンガポールへ出張しているのですが、ほぼ全員が深夜便で往復していました。
社員の中には、「どうせ寝ていくだけだから、好都合だ」と気にしていない人もいれば、「飛行機の中では眠れない。ほとんど徹夜を強いられているものだ」と懸念を覚えている人もいました。しかし、ほぼ全ての人が深夜便で移動しているので、懸念を覚えていてもそれを言い出せなかったようです。
裁量労働や、残業の取り扱いについて、よくある問い合わせや誤解される点を紹介してきましたが、(参照:「深夜だろうが通勤と同じ!?
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