メキシコの麻薬カルテルによる米国との麻薬取引は5年間で21兆円
CONTRA LINEA」、「El Confidencial」)
米国とメキシコとの国境には56カ所の両国の通過地点があるが、全取引貨物の42.4%はメキシコ側のタマウリパス州の都市ヌエボ・ラレードと米国テキサス州の都市ラレードとを繋ぐ通過点が利用されているという。この通過点が麻薬を米国に密入させるのに良く利用されているのである。通過する貨物の多さから通関検査をいちいち細かく実施できない。その盲点をカルテルは利用しているのである。(参照:「El Confidencial」)
この盲点があることから、タマウリパス州ではカルテル同士の縄張り争いも盛んである。カルテル・ノロエステ(Noroeste)、カルテル・ゴルフォ(Golfo)カルテル・セタス(Zetas)の三つ巴の戦いが繰り広げられている。メキシコで最大規模だったカルテル・シナロアのチャポ・グスマンが逮捕されて刑務所に入って以来、親分がいなくなったことによってカルテル同士の戦いは熾烈化しているという。
2015年から2017年の2年間にタマウリパス州で805人が殺害され、140人が誘拐されて、5500人が消息不明になっているというから恐ろしい。
ちなみに、セタスはゴルフォから分かれたカルテル、ノロエステはセタスから分かれたカルテルという具合で、20年前まで同州ではカルテル・ゴルフォが唯一存在していただけであったのだが、その意味では現在の状況は本家と分家が覇権を争っている形と言える。
麻薬の世界最大の消費市場である米国を隣国にもつメキシコの麻薬密売組織カルテル(Cartel)は、2007年まで僅か7つのカルテルが存在していただけであった。それが現在では、20のカルテルに加え、それに癒着した犯罪グループが200以上あるという。カルテルと犯罪グループの増加を如実に示しているのが殺害事件の増加である。この20年間でメキシコで殺害された人は25000人以上であるというのが昨年公表された。
メキシコからカルテルを通じてアメリカに送られる麻薬は、ヘロインを始め、メタルフェタミン、コカイン、マリファナと多岐に及ぶ。米国財務省の推計によると、2013年から2017年までの取引額はおよそ3兆6465億ペソ(21兆1500億円)にまで及ぶという。更に、ヨーロッパやアジアでの販売もあるが、それはその推計には含まれていない。ヨーロッパに入る麻薬の玄関はスペインとオランダである。(参照:「最大の「交易地」ではカルテル同士の覇権争いも
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