いかに取り繕おうと、微表情は全てを知っている――今回は連載50回目を記念して、よく寄せられる質問に回答する!
こんにちは。微表情研究者の清水建二です。
微表情をはじめとした感情世界について書き続けた本連載が今回でなんと50回目を迎えることになりました。
ご愛読下さっている読者の方々、どうもありがとうございます。今回は連載50回目を記念して、表情・微表情にまつわる疑問に答える形式で、微表情について改めて整理したいと思います。
今回の知識を下敷きにすると本連載のこれまでの内容をずっと深く理解できるようになると思います。
10,000種類ある表情の中で万国共通の表情はいくつ?
Q1・表情には何種類あるの?
全部で10,000種類以上とも言われています。中でも万国共通の表情として、「幸福・軽蔑・嫌悪・怒り・悲しみ・恐怖・驚き」の7種類があります。
万国共通ではないかと考えられ研究が進んでいる表情として、「羞恥・恥・罪悪感・畏れ・誇り・楽しみ・愉しみ・興奮・快楽・安堵・満足・感傷的」の12種類があります。
さらに感情以外の顔の動きとして、「熟考・興味・関心・納得・既知・ひらめき・痛み・味覚に関する顔の動き」などがあります。
そして、感情のブレを示す表情の動きや顔で行われる各種ジェスチャーがあります。これらの顔の動きはFACS(ファクス)という客観的に顔面動作を記録する手法によって厳密にコード化されています。
Q2・なぜ表情が万国共通と言えるの?
欧米人をこれまで見たことがない人々が欧米人の表情を正しく特定出来たことを示す調査があります。また今まで目でモノを見た経験がない盲目の柔道選手の表情と目の見える柔道選手の表情が、試合に勝ったときや負けたときなどの同じ状況下で、同じになることが観察されています。もちろん、文化によって異なる表情は多数存在します。
Q3・表情が文化・民族によって違って見えるのはなぜ?
表情をコントロールするための暗黙のルール(=表示規則)が文化・民族ごとに存在するからです。例えば、私たち日本人がカフェの店員さんに笑顔で「ありがとう」とコーヒーを受け取る頻度は、アメリカ人と比べて低いでしょう。
日本人は自分の属する集団に愛想よく、アメリカ人は自分の属さない集団の方に愛想よく振舞う傾向にあるからです。また表情の方言理論といって、異なる文化圏の人々が、同じ場面で同じ表情をしていたとしても微妙にその表情の動きの強さが異なる現象が知られています。こうしたことから表情が実際に異なっていたり、異なって見えることがあるのです。
Q4・微表情とは何?
微表情とは、抑制しても抑制しきれない強い感情が微細な顔の動きとして現れる現象です。
微表情が顔に現れている時間は、0.2秒とも0.05秒とも言われていますが、近年の研究によって、概ね0.5秒ほど顔に現れることがわかっています。
また顔全体に微表情が生じることはまれで、顔の一部に抑制された表情の痕跡が生じることがわかっています。
例えば、普通の怒り表情は、眉が中央に引き寄せられる+目が見開かれる+下まぶたに力が入れられる+唇が上下からプレスされる、というものですが、怒りの微表情は、その一部、眉が中央に引き寄せられる、あるいは、唇が上下からプレスされる、という動きが一瞬だけ生じる、というものです。