配置基準を超えた人数を見ることも 現役保育士の悲痛な叫び
「保育園落ちた日本死ね」が新語・流行語大賞のトップ10に入ってから、早2年。「保活」に悩む親はいまだ後を絶たないが、なんとか子どもの入園が決まったと、新年度が始まって安心している人も多いだろう。しかし、ほっと胸を撫で下ろす親とは対照的に、保育士の表情は暗い。
「保活」経験者ならご存知だろうが、一口に保育園と言っても、その運営形態はさまざま。大きくは、施設の広さ、保育士の数などが国の設置基準を満たしている認可保育園、やや割高だが延長保育や夜間・24時間預かりができる園もある無認可保育園の2種類にわけられる。さらに認可保育園のなかでも、市区町村が運営する公立保育園と、社会福祉法人や企業が運営する私立保育園がある。また、幼稚園と保育園、両方の特徴を備えた認定こども園など、多種多様な保育施設が存在する。
今回、「保育士の辛い現状を知ってほしい」と取材に応じてくれたのは、関東某所の認定こども園に勤める保育士のAさんだ。
東京都では年齢別に「4歳以上児30人につき1人、3歳児20人につき1人、1、2歳児6人につき1人、乳児3人につき1人」(平成29年「東京都保育所設備・運営基準解説」より)という保育士の配置基準が設けられているが、Aさんによれば、こうした基準をオーバーすることもあるという。
「もともとギリギリの人数でやっているので、風邪やフルエンザが流行る時期はあっという間に保育士の人数が足りなくなるんです。配置基準を超えた人数の面倒を見なきゃいけないこともありました。普段も延長保育など、当番の時差をとるため、基準を守るために非常勤さんを含めて子どもを見ることが多いです。しかし、最近はお迎えの時間が遅くなってきているので、その分、さらに要員が不足しています。ハッキリ言って地獄ですよ……」
子どもを預ける側としては落ちた/受かったばかりに意識が向きがち。保育園の数が足りないということばかり大きく報道されが、現場に立つ保育士の苦労はあまり取り上げられない。不慣れな現場にやってきた非常勤保育士とのやり取りなど、仕事は山積みだ。
「そんな状況でしっかり子どもの面倒を見るのは正直言って難しい。ちょっと目を離した隙にケンカや怪我をしてしまうと、親御さんにどういう状況だったのか説明もしなきゃいけない。そうやって、どんどん仕事が増える悪循環になっているんです。子どもの誕生日がくれば、誕生日カード作りや飾り付けも保育士が行います。子どものためを思うと自分たちがやらなきゃいけないという思いが強いので……。全てが子どもに携わる仕事とはいえ、大変です。それをみんな残業などで補っているのが現状。年長向けのオリンピック教育など、幼稚園教育要項が改訂されたことで新たな取り組みも増えています」
親からすれば、我が子の大事なイベントは嬉しいもの。しかし、保育士はマンツーマンで働いているわけではない。
また、最近はシッターを利用する家庭も増加。親にとっては便利な反面、保育士が子どもの姿をダイレクトに伝えることはますます難しくなっている。自分の目が行き届かないため、親の不安要素は増し、その結果、保育士へのクレームに繋がりやすくなっているそうだ。こうした事態に保育士は親が来園するのを待ったり、直接電話をかけるなどして対処しているが、これも就業時間を増やす原因となっている。
保育士が「地獄」と語る現場
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