そういえば、「独立宣言」したカタルーニャ州はいまどうなっている!?

 この外国からのカタルーニャへの投資の現象を如実に示すものとしてドイツのアグロラブ(Agrolab)社という企業がカタルーニャへの投資を断念してカスティーリャ・レオン州に投資先を変更したという具体例がある。この企業は農業関係における環境などを調査分析するドイツでは重要な企業である。  当初の予定では同社が支社を構えているカタルーニャの都市タラゴナに600万ユーロ(7億8000万円)を投じて大規模な農業研究所を建設する予定であった。その為に200名の新規雇用も予定され、事業展開の為の土地も購入していた。  ところが、カタルーニャ州の独立への動きから州民が二分され、州政府も実質的に半年以上機能していないという現状に失望し、不安を感じて急きょ投資先をスペイン北部の都市ブルゴスに変えることを決定。早速、その地に5000平米の土地を買収した。ブルゴスを選らんだ理由はそこには既に25名のスタッフを抱えた支社があるからであったという。(参照:「La Vanguardia」)  アグロラブ社のジェネラル・マネジャーであるポール・ウインマーは、同社のスペイン人従業員から届いたこの決定の変更についての質問状に次のような回答をしたという。 <「我々はカタルーニャの政治の展開に驚き唖然としている。スペインで非常に発展しているある地方が不安定な状況を生もうとしていることに我々は理解できない」「即ち、それは経済的な不安定を生むことに繋がる」「仮にカタルーニャがスペインから独立しても、欧州連合はそれを受け入れることはない」「よって、カタルーニャは欧州連合の加盟国にはなれない。このような事態になることは我々の事業にとって、それは多大な損害をもたらすことになる」>(参照:「La Vanguardia」)  これはまさしく、これまで州外に3500社以上が本社を移した理由を象徴するものである。

80年代のケベック州の轍を踏む!?

 カタルーニャが陥っている現状の前例をカナダのケベック州に見ることが出来るとする見方も浮上している。  ケベック州そしてその中心都市モントリオールは1980年代から90年代に続いた独立運動の後遺症で経済の発展の遅さは現在も続いているのだ。  1980年に実施された国民投票がケベックの将来を左右する分岐点となった。ケベックに本社を構える8つの銀行の内の7行が別の州に本社を移転させたのである。そして、企業700社が州外に移転した。このインパクトを更に強烈にしたのは、それに伴って数十万人が他州に移民したことであった。1990年代まで大手企業96社が本社をケベックに構えていたが、現在その3割が他州に移転している。  更に、ケベック州当局は公用語をフランス語としたことによって、英語が経済を支配する現在、中心となる商圏も隣接したオンタリオ州の首府トロントに移動してしまった。(参照:「La Vanguardia」)
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人口流出に悩んだケベック
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