年金データが中国へ。年金関連業務も多い大連アウトソーシングビジネスの実態

我妻伊都

何もなかった湿地帯がビジネス街へ変貌した大連ハイテクゾーン

「年金関連の業務がなくなったら廃業に追い込まれる企業が……」と危惧をするのは中国大連に駐在する日系企業駐在員だ。

 2018年3月20日、日本年金機構から委託された業務の一部を大連の企業へ再委託していたことが発覚し、委託を受けた「SAY企画」の切田精一社長が謝罪会見をした。問題となった業務は、再委託が禁止されていたため契約に違反するものだった。(参照:「毎日新聞」)

 切田社長は、会見で委託した大連の会社は自身も役員を務めているので再委託には当たらないと認識していたこと。委託した業務は、氏名の読み方と漢字をデータから抜き出す作業で個人特定ができない単発情報のため個人情報ではないと説明した。後に説明するが、確かに切田社長の話通りの作業であれば、入力委託した情報は個人情報には該当しない。

アウトソーシング受託で発展した大連

 東京から1600kmほどに位置する大連は、戦前、日本が委任統治した都市として発展した歴史を持つ。その影響もあり現在でも日本語をビジネスレベルで操ることができる日本語人材と呼ばれる人材が豊富で日本の業務も多く請け負っている。

 大連は、2000年代初頭から中国最大のアウトソーシング(BPO・オフショアとも)基地として日本だけではなく、欧米諸国向けのアウトソーシングビジネスで発展を遂げてきた。

 その礎を築いたのは後に失脚する薄熙来元市長で、コンサルタントの大前研一氏が協力して「知の集積基地ソフトウェアパーク」を築くことになる。大前氏と大連との関わりは、『中国シフト』(小学館)に詳しく言及されている。

 大連における2000年代前半の日本向けのアウトソーシング事業は、コールセンターや社内向けのITヘルプデスクなどより高度な言語力が必要なコール業務が中心だったが、中国人の人件費高騰や日本の景気回復なども影響し、コール業務は国内回帰やタイなどへ移管され大幅に縮小、現在では、今回、問題となったようなデータ入力や人事、経理などバックヤード業務が主流となっている。それでも今なお大手自動車メーカーや通信会社、金融機関、家電メーカー、IT系、学習塾など数多くの名だたる日本企業がブランチオフィスを構えたりアウトソーシングしている。

 冒頭で嘆きの声をあげていた現役日本人駐在員によると、年金関連業務に関わる企業は少なくないという。再委託が禁止されてない業務は、単価の安い中小のアウトソーシング企業が請け負っていることが多く、年金関連業務が全面委託禁止になったらこれらの企業は倒産するのではないかと話す。

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ビッグデータについての認識の差

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