宇宙ベンチャー企業の展示を視察する安倍首相 Image Credit: 首相官邸ホームページ
宇宙ビジネスにこれほど手厚い支援が必要なわけは、他の分野に比べて、参入障壁がとても高いという事情がある。
たとえばIT分野などであれば、数千万から数億円といった少ない額からスタートすることもできるが、宇宙業界ではロケットを1回打ち上げるのに約100億円もかかり、人工衛星の開発・製造も(規模にもよるが)それと同じくらいか、さらに多額の金額が必要になるなど、まず動き出すだけでも莫大な資金が必要になる。
また、ロケットの打ち上げには失敗がつきものであり、失敗し、載せていた衛星が失われれば、数百億円が吹き飛ぶことになるなど、リスクが高い。つまり何回か失敗するという前提で、それでも事業を続けられる資金力が必要になる。
さらに、事業として成立するまでには時間もかかる。たとえばイーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXも、設立(2002年)からすでに16年が経って、ようやく当初の目標の道半ばといった場所にいる。ジェフ・ベゾス氏率いるブルー・オリジンも、設立(2001年)から17年経つが、まだビジネスという点では大きな成果は残せていない。
つまり研究開発に必要な時間がとても長く、その間は基本的に商品やサービスの販売による利益は見込めない。マスク氏やベゾス氏はともに大富豪であり、私財を投じられるためやや例外的だが、他の企業であれば、その間は投資家や国による投資や支援が頼みの綱となる。
米国では宇宙ベンチャーがすくすく育つ環境があり、成果も出始めている。写真は米国の宇宙ベンチャーでユニコーン企業でもあるロケット・ラボが開発した超小型ロケットの打ち上げ Image Credit: Rocket Lab
とくに米国では、こうしたことへの理解が十分にあり、さまざまな投資家が宇宙ビジネスにお金を流し、中にはかつてのフェイスブックやUberなどと並ぶ、評価額10億ドルを超える“ユニコーン企業”も存在する。
いっぽう日本でも、すでに20~30社ほどの宇宙ベンチャーが立ち上がっており、米国企業に負けないユニークなアイディアをもつところも多い。しかし、資金面、人材面で苦労しているという声がよく聞かれる。今回の支援策によって、そうした問題が少しでも解決することが期待される。
ひとつ大きな課題があるとすれば、大企業がこれにどこまで応えられるかということだろう。昨今、日本企業が莫大な金額の内部留保を溜め込んでいることが話題になっているが、その一部でも宇宙ビジネスに流れることになれば、大いに活性化することになる。