ナンバー1キャバ嬢が、安倍政権「桜を見る会」に招待された理由とは?

SNSで無料のお客さんを集め、数%の太客を育てる

 2000年代初頭のカリスマキャバ嬢はメディア露出をほとんどせず、アウトサイダーっぽい稼ぎ方をするのが普通でした。  太客の中には金融屋さん(ヤミ金業者)が一晩で何百万も使うなどのケースも多かったようです。ヤミ金業者への法規制が強まった約10年前からは、『小悪魔ageha』などのギャル雑誌やブログで女性からも人気を博すケースが増えていきましたが、まだまだ雑誌が中心の時代でした。  ところがここ数年、雑誌に代わって浸透したのがSNS。今や全国区で有名なNo.1キャバ嬢たちは、数年にわたってSNSでファンを殖やしてきた方々ばかりです。  たとえば北新地で先日、惜しまれながら引退した門りょうさん(年収2億円)、ブランドプロデューサーとしても活躍する、歌舞伎町の愛沢えみりさん(アパレルブランドの月商は2億円)。どちらもSNSを使いこなし、男性だけでなく女性ファンをも獲得しています。  小川えりさんも彼女たちと似たケースです。  彼女は数年前から、東海地区では「週7日出勤するNo.1キャバ嬢」として非常に有名でしたが、その名を全国に知らしめたのは間違いなくSNSの発信力。ほぼ毎日更新されるブログ(携帯での閲覧に特化したCROOZというサービスを使っている)は、読者を楽しませるお客さんとのギャグエピソードや変顔、飾らない日常のトホホな失敗話などが満載で、私も元気のないときに見てはエネルギーをチャージしています。  読んだことがない方はぜひ一度、見てみて下さい。「なんておもろいコなんや!」と夢中になってしまうと思います。文章力や、記事をエンタメとして昇華させる才能が素晴らしいのです。  一方、ブログより少し遅れて始めたというInstagramには、ドンペリなどの高級シャンパンをズラリを並べたきらびやかな写真がズラリ。高級ブランドのパーティーに招待されたり、高価なアクセサリーを買ったりと、華やかな日常を覗き見ることが可能です。  面白すぎてスクロールが止まらないブログと、キラキラしたお姫様のような写真の数々が、どちらも無料で見られるんです。  コンテンツとして最高のものを無料で提供し、それに惹かれたファンが全国からお店に殺到する。小川えりさんはじめ、現在のカリスマキャバ嬢に目立つのはこの図式です。少し前に流行ったフリーミアムを思い起こさせますね。  無料で集めた大量のファンから数%の太客が生まれれば、誕生日イベントでの「2日で1億」も可能でしょう。  エンタメ性の高いSNSコンテンツが話題になれば、テレビ局が目をつけます。小川えりさんはこの1年ほど、頻繁に雑誌やテレビ番組へ露出するようになりました。もはや1ヶ月に1回はバラエティ番組で特集されているのではないでしょうか。  テレビで顔を見たことがある!というレベルになりますと、もはやキャバ嬢というよりタレント、いや文化人枠に近くなります。一般人とタレントの間、なんらかのエンタメ性をもった専門家という位置づけです。  文化人はタレントよりも出演ギャラが安いうえに、下手なタレントよりもパンチがあって話題性にあふれている。しかも美人。そんなキャバ嬢を、制作費の減少にあえぐテレビ局は放っておきません。こうした理由もあって、ここ数年はカリスマキャバ嬢がテレビに登場する機会が増えているように思います。  今やお笑い芸人をメインコメンテーターに据え、大物芸能人と会食する安倍首相が、テレビを味方につけたくないわけはないでしょう。  その中で小川えりさんは、キャバ嬢という「裏社会の人間」でありながら、SNSとテレビの力で「表社会」との間を自由に行き来する切符を手に入れた特別な存在なのです。折に触れて「きちんと納税している」と明言しているところも、現政権よりよっぽど清廉潔白なイメージがあって良いのではないでしょうか。 <文・北条かや> 【北条かや】石川県出身。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学部研究科修士課程修了。自らのキャバクラ勤務経験をもとにした初著書『キャバ嬢の社会学』(星海社新書)で注目される。以後、執筆活動からTOKYO MX『モーニングCROSS』などのメディア出演まで、幅広く活躍。著書は『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)、『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)、『こじらせ女子の日常』(宝島社)。最新刊は『インターネットで死ぬということ』(イースト・プレス)。 公式ブログは「コスプレで女やってますけど
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