国の規制が必要か、業界の自主的改革か? アダルトビデオ「出演強要」問題

元トップAV女優が「国による規制強化」の動きに反論

晶エリー

晶エリーさん

 こうした国によるAV規制強化の動きに異を唱えるのは、2005年にデビューして以来、単体作品に300本以上出演している元トップAV女優の晶エリーさん。 「『出演強要された』と訴えている女優さんの1人は、私の周りのAV女優さんたちがよく知っている人です。当時はやる気まんまんで、撮影現場でキャッキャッと楽しんでる感じだったという印象を聞いています。やめた後に彼氏にバレて、言い訳として『無理矢理だった』と嘘をついて出演強要を訴え始めたと聞いています。 私には、制作者や事務所がかわいそうだと思えます。いまAVの世界は、仕事がほしくてもなかなか面接に受からなかったり、競争率が高かったりするものです。ですから女優さんに強要するなどということは、事務所からすればリスクとメリットが見合いません。私が事務所と契約書を交わしたのは10年以上も前のことですが、撮影するごとに事務所からNG項目を必ず確認されましたし、メーカーからも二重に確認されていました。 通常の事務所はしっかりした対応をしていますし、女の子を搾取することはありません。いま社会問題になっているのは、あくまでも業界内の傍流での話です。AV業界全体に出演強要がはびこっているような印象を受けがちですが、そうではないということを知ってほしい。AVに出ることが後ろ指を指されることではなく、明るく楽しい業界だな……と思われるようになってほしいと思います」

AV産業「適正化」のための第三者機関が発足

動画撮影 一方、AV産業側の自主的な改革として、第三者機関による規制も模索され始めている。「AV制作スタッフの募集から販売までの各工程において、人権、特に出演者等の自己決定権が保護されなくてはならない」という問題意識にもとづいて、2017年4月に「AV業界改革推進有識者委員会」が発足。同団体で委員を務める山口貴士弁護士は次のように語る。 「これまでのところ、AV出演強要を直接の被疑事実とした逮捕・有罪事案はありません。しかし、出演強要がなかったとも考えてはいません。 『出演強要が起きてもおかしくない』という前提のもとで、女優さんの自己決定権と安全が確保される形での撮影が行われるよう、AV産業の改革が必要であると考えています。業界が順守すべき8項目の提言と22条の規則を制定し、これを遵守したAVを『適正AV』とする枠組みを構築しました。 この『適正AV』のシェアは業界全体の8~9割を占めていると考えています。2017年10月には有識者委員会の後継団体として『AV人権倫理機構』が発足し、今後は業界の第三者機関として『適正AV』が順守されるよう監督指導していくことになっています。 このルールを守らないメーカーやプロダクションは『適正AV』から退場することになります。大きな変化としては、女優さんに無条件の出演拒否権を認め、違約金などのペナルティーを禁止したこと。そして、過去に自分が出演した作品の販売等停止を求めることができる制度を作ったことなどが挙げられます。 AV業界改革推進有識者委員会とAV人権倫理機構の理事は、AVメーカーともプロダクションとも無関係な4人の有識者で構成されています。代表理事に、憲法の専門家である武蔵野美術大学の志田陽子教授、犯罪学・法社会学の専門家である桐蔭横浜大学の河合幹雄教授、そして私、歌門彩弁護士の4人です」
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