デンソーウェーブの協働ロボット。5Gの活用でロボットの低遅延性が実現できる
世界最大規模のスマホ・通信機器見本市「モバイル・ワールド・コングレス」(以下、MWC2018)が、スペイン・バルセロナで開催されたのは2月下旬のことだった。世界各キャリアやメーカーによって、最新のスマートフォン機種や、IoT端末、コネテクティッドカーなど話題の製品が数多く発表されたイベント会場では、ひとつの共通するキーワードがいたるところに掲げられていた。そのキーワードとは、「5G」(第5世代移動通信システム)だ。
5Gの特徴は、「超大容量・超高速通信」「低遅延」――。約500km/hの移動速度の中でも通信可能な「モビリティ」などとされている。そのような新しい通信環境が実現すれば、VRやAR、MR(複合現実)など、データの送受信が重要な要素となるコンテンツ・サービスがより広範に発展していく可能性がある。実際、会場では多くの企業が“各社各様”の、VRAR、MRコンテンツを展示。詰めかけた来場者によって、体験され人気を集めていた。
ただし、5Gが実現した際のメリットは、それらコンテンツや大容量の動画コンテンツなどの通信環境が向上するというだけにとどまらないようだ。今回のMWCには、通信系イベントとはあまり縁がなさそうに思える業種の人々も展示を行っていた。
「実は通信系のイベントで展示を行うのは、弊社としても初めてのこと。ハードウェアやソフトウェア、もしくは通信という技術の枠を超えていくことが、新たなイノベーション、ビジネス創出の源泉だと感じ始めています」
そう話すのは、会場内にブースを構えていた国内の大手産業用ロボットメーカーの関係者だ。5Gなど通信技術の発展は、やがて自社の既存製品の形までも変え、新たなビジネスチャンスを開いてくれる可能性があるというのだ。
これまで産業用ロボットは、主に自動車や家電など、大規模な製造業の工場ラインで稼働してきた。安全性と生産性を担保するため、「サイズがとても大きく頑丈」「安全性を確保するため作業スペースが人間と隔離されている」「頑丈な回線ケーブルで繋がれている」などの特徴があるが、裏返せば、柔らかい、もしくは小さいものを処理する作業が苦手で、設置場所を頻繁に変える作業に限界あり、かつ人間と一緒に仕事ができないという難点があった。そこで各メーカーは、サイズが小さく、人間と一緒に働けるタイプの産業用ロボットである「協働ロボット」の開発で互いに鎬を削っている。
「5G環境の実現など通信技術の発展は、産業用ロボットや協働ロボットのワイヤレス化、すなわち小型化とポータビリティー性向上、そして汎用化の原動力になるはず。メーカーにとっては、コストや技術の問題でロボットの導入が困難だとされてきた中小企業向けにBtoBビジネスを拡大できるだけでなく、BtoCビジネスを模索できる道が拓けるかもしれません」(前出の産業用ロボットメーカー関係者)