スカパーJSATがAmazon・ベゾスの”青臭い”ロケットに興味をもった理由とは

「我々は利潤を追求する民間企業」という姿勢

 スカパーJSATが実績のない新型ロケットを採用するのはこれが初めてではない。  2013年には、イーロン・マスク氏率いるスペースXに提案要求書(「こういう衛星を、こういう条件で打ち上げたいが可能か?」といった問い合わせ)を送り、2014年には契約を締結。2016年には打ち上げに成功している。  2013年の時点で、スペースXはまだ商用の通信衛星を打ち上げた実績がなかった。そのため、そんな企業に提案要求書を送ったことに対して、「あれほど保守的なスカパーJSATがなぜ?」という声も聞かれたという。  これに対しスカパーJSATは、日本航空宇宙工業会の会報『航空と宇宙』に寄せた、この打ち上げの顛末について書いた文書の中で「我々は利潤を追求する民間企業です。新しいから、実績が無いからといって、彼らの破壊的価格にあえて背を向ける選択肢は、我々の頭の中にはありませんでした」と語っている。  ブルー・オリジンもまた、スカパーJSATをはじめとする衛星会社にかなり安価な価格を提示していると考えられる。ニュー・グレンの価格は公表されていないが、ある関係者によると、同じ打ち上げ能力で比べた場合、スペースXよりも安価な金額を提示しているという。  この価格が、打ち上げ初期ならではの割引価格なのか、それとも割引なしの価格なのかはわからないが、いずれにしても安価かつ魅力的であることは事実である。

ベゾス氏と歓談するスカパーJSATの関係者 Image Credit: Blue Origin

情報のオープンさ、柔軟性も影響か

 また、スカパーJSATはスペースXとの契約締結までに、同社のロケット工場や試験場、発射場を視察し、評価した上で契約を交わしている。つまりそれだけスペースXも協力的だったということだが、ブルー・オリジンもまた、つまびらかに情報を開示しているか、する姿勢を示しているのだろう。  もうひとつの要因として、価格的に競合するスペースXは、これまでに受けた打ち上げ受注が積み上がっており、またロケットの失敗もあって打ち上げ予定も遅れている。そのため、前述のロケットを選ぶ条件のひとつである、スケジュールの柔軟性が失われている。つまり今から「いついつまでに衛星を打ち上げたい」と注文を出しても、実際の打ち上げまでかなりの時間待たされるか、あるいは優先的に打ち上げてもらうためにオプション料金を支払わなくてはならない可能性がある。  そのため、後追いとはいえ、ブルー・オリジンには現在、大きなチャンスが訪れている。  スカパーJSATがブルー・オリジンと今回の合意に至った理由として「選択肢と柔軟性の確保」を挙げているのも、まさにこのことが影響しているのかもしれない。  ブルー・オリジンはこれまでに、フランスの大手衛星通信会社ユーテルサットや、宇宙インターネットの展開を目指すワンウェブなどとも契約を結んでおり、今回スカパーJSATからも選ばれたことで、今後、さらに受注が加速するかもしれない。
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なぜ日本のロケットは選ばれないのか?
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