佐川氏が受け手に回っているときの首の角度も注目。少なくとも見た目に不真面目さが薄れてしまう。(写真/時事通信)
佐川氏の素振りに見る「聞き手が気持ちよくなってしまう技」
3月27日、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われた。中継を見ていると、小刻みに頷く様と、「この方、毛髪の量すげえなあ」というのが個人的に強く印象に残ったのだが、毛髪はともかく、「決定的な失言はたぶん出てこないだろうなあ」というのは多くの方が思ったはずだ。
セミプロギャンブラーとして、さまざまなギャンブルの予想を行っている筆者は、公営ギャンブルの予想をするとき、選手が折に触れて出すコメントを割と重視している。とりわけ競輪については作戦が結果に与える影響が大きいため特に重視することになる。G1などの前日にニコ生での展望放送をする中でも、公式発表される共同記者会見でのインタビューを読み上げて検証する、ということを必ずやっている。なぜなら、言葉の端々に「意図」や「想い」が隠れている場合がよくあるからだ。
佐川氏の話し方において特徴的だった「首を軽く斜めにしている」「小刻みに頷くような動きをする」という2点は、言葉に慣れている人が見せる特徴の一つだ。選手でも、こういうタイプの選手は少ないが、作戦のキモを読み切るのは非常に難しい。
「首を軽く斜めにしている」というのは「聞いている」というアピールには最適な動きとなる。耳を少し向ける動きをされて、聞き手側(これは質問者のみではなく中継を見る全ての人)が悪い印象を持つことはない。
もちろん、首の角度が深すぎるとわざとらしさが爆発してしまうため逆効果だ。極端なダメな例だと、あの野々村議員の弁明会見での耳に手を当ててしまうアレになる(もちろん耳の前に手というコンボが決め手だが)。
【話を聞くアピール】首の傾けが極端では「わざとらしさ」しか見えない。
小刻みな頷きには「マイペースを維持する」効果がある
「小刻みに頷くような動きをする」のは、もちろん話を聞いている感が出るという効果もあるが、それ以上に「自分のペースを崩さない」点で優秀だ。言うべきこと、言わないつもりのことを事前に決めていたとしても人間はペースを崩すと「こぼしてしまう」ものなのだが、誰に何を言われても、なにか一つ守られているペースがあると崩れにくくなる。
だが、単純に小刻みに頷けば良い訳ではない。意識しすぎて頻度や大きさが変わってしまっては、むしろペースを崩すし、仮に動揺しそうな質問が来たとして、止まったりしてはいけない。その点、この頷き技は経験を多く積まないと寧ろ失点を生むという高度な技だと言える。推測だが、修羅場を何度も経験していないとできない。
逆に言えば、普通の人は「小刻みな頷きが急に止まった」という部分に緊張が見える、というわけで、これは私の競輪予想でもインタビューが動画公開されている場合によく注意している部分だったりする。
この点においても、佐川氏は「鉄壁の守り」で、事前に決めていた「言うべきこと、言わないつもりのこと」を守りきったと言える。