リーバイス、米生産復活と環境保護を両立させた陰にある企業の存在が

 さらに、「e-Flow」という洗浄システムでは、微細な気泡であるナノバブルを利用することによって1本のジーンズを洗浄するのに僅かコップ1杯の水で十分だという。このシステムによって水の消費は90%節約されるとしている。勿論、それによる電気代の節約にもなるのだという。  ジーンノロヒア社では、この3つの工程を一貫した生産設備も提供しており、リーバイス社の場合は3年を懸けて双方でテクノロジー面での協力を進めて、同社の製品の特徴を損なわずに生産できるよう体制を詰めていき、ついに3月に3-4年を目安に同社の全工場にJeanologíaのテクノロジーを採用するとの決定を下したのである。(参照:「El Confidencial」、「El Pais」)  リーバイス社以外も、ジーンノロヒア社の技術を採用する企業は少なくない。例えば、Polo Jeans、Abercrombie&Fitch、Edwin Japan、Pepe Jeans、Diesel、Hilfiger Denim、Salsa Jeans。Jack&Jones、Replay、GAP、Uniqlo、H&Mなども採用しているという。(参照:「El Mundo」)

急成長するジーンノロヒア社

 この技術の成功により、ジーンノロヒア社の規模も拡大している。会社設立は1993年とまだ新しい企業だが、2011年の年商1600万ユーロ(20億8000万円)、2014年3000万ユーロ(39億円)、昨年6500万ユーロ(84億5000万円)と着実に成長している。そして今年は1億ユーロ(130億円)の売上を目標にしているそうだ。(参照:「El Pais」)  また、従業員数も現在は200名であるが、成長が著しく毎週エンジニアをひとり採用するようなペースになっているという。エンジニアといっても特に化学、光学、フォトテクニカ、数理学、物理学の分野で精通している人、そして美術工芸などに長けている人などが採用の対象になっているという。(参照:「El Confidencial」  現在世界60か国に同社の機器や設備を輸出しており、世界で年間生産されている50億本のジーンズの35%以上はJeanologiaの技術が採用されているという。(参照:「El Mundo」)  ジーンノロヒアの社長、エンリケ・リーシャ氏はもともとジーンズ業界の出身だ。ジーンズの生産が如何に人体に有害でしかも環境汚染を助長しているかということを熟知していた彼は、環境を汚染させず、労働者にも有害にならないジーンズの生産システムの構築を望んでそれに取り組み、ジーンノロヒア社が生まれたのである。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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