個人が持つモバイルデータを他人に販売することができる!?
自動車や自転車(移動手段)、オフィスや生活スペース(不動産)、はては生活用品や人材まで、ここ数年、急速に拡大を見せている「シェアリングビジネス」。UberやAirbnb、Mobike、メルカリ、クラウドワークなど、モノ・コトをユーザー間で取引するシステムを構築し、莫大な収益を上げ始めている国内外の新興企業の認知度は、世界および日本で着実に高まっている。
そんななか、誰も思いもよらなかったモノを対象に、ユーザー間の直接取引を実現しようとする企業が現れた。香港など各国に拠点を構える「DENT Wireless」(以下、DENT)だ。同社が目指すのは、「スマートフォンのデータ通信容量」の個人間取引だ。欧米では「モバイルデータ」と呼んでいるが、日本では「パケットデータ」や「通信データ」という呼称がより馴染みが深いかもしれない(本稿ではモバイルデータで統一)。
現在、ユーザーは各国の通信キャリア(日本ではドコモやauなど)との各契約プランに応じて、それぞれモバイルデータを購入しつつ、スマートフォンのデータ通信機能を利用している。メールなど基本的な機能しか使わない人は「低額かつ少容量の通信プラン」を、反対に動画や生中継などを頻繁に楽しむ人は「高額かつ大容量の通信プラン」を選択するといった形だ。しかし、このようなデータ購入モデルは問題、というよりも無駄や合理的でない部分が多い。
例えば、ほとんどのユーザーのモバイルデータ使用量は、各月毎にバラつきがある。通常、月間5GBのモバイルデータプランを契約したとしよう。ただ、ある月には2GBほどしか使用しなかったというようなことが頻繁に起こる。通信キャリアによっては、翌月まで使用を持ち越すことが可能だが、それでも使いきれないということはざらだ。すると、契約したモバイルデータは無効となり、そこに浪費が生まれる。
DENTが手がけるサービスを使用すれば、その余ってしまったモバイルデータを他の誰かに販売することが可能となる。一方、モバイルデータを多く使用するユーザーは、通信制限がかかったり、高額な請求に悩まされることがなくなる。DENTのサービス上で、必要な分だけ追加購入できるからだ。日本では、動画の見すぎやゲームのやりすぎで「ギガが足りない」と嘆く若年スマホユーザーも多いなか、こうしたサービスは一定の需要を生む可能性は高い。
DENTが提供を予定しているモバイルデータ取引のイメージ
一方、旅行や出張など海外に頻繁に行く人にとっては、同じデータ量であっても国内の通信料より割高に設定されてしまう「国際ローミング」も悩みの種だ。海外でスマホを何気なく使用していたら、仰天するような金額を請求されたという人はきっと少なくないはず。また、日本の空港でWi-fi機器を借りたまではよいものの、金額が高い割に上手く接続されず、結局ストレスだけが溜まったという経験をした方々もきっと多いはずだ。こちらも例えば渡航先で現地の人からモバイルデータを購入すれば、解決できるというわけだ。
DENTの狙いは、それらデータ使用における不効率性や、各国のデータ通信料の不均衡を解決するため、専用アプリ上でユーザー同士がモバイルデータを自由に販売・購入・寄付できる仕組みをつくることだ。そして、そのシステムには、昨今話題のブロックチェーン技術が採用されている。また販売・購入には、同社が発行したトークン(仮想通貨)である「Dent」が使用される。