コインチェック会見の表情を研究者が分析「ウィルス対策に泣き所抱えているのかも」

和田社長は、緊張すると笑ってしまう性格なのかもしれない!?

 こうしたベースラインからの乖離が冒頭に挙げた動きです。具体例をいくつかピックアップします。 0:07:22~ 大塚氏:  『え~』その調査の結果、外部の攻撃者が当社従業員の、『えと~』あの端末ですね、パソコンにマルウェアを仕込み感染の方をさせました。続いて、その感染した『えと~』マルウェアを使って『えと~』外部ネットワークからですね、当社のネットワークに侵入ほうを試み、ました。で、外部ネットワークから、『え~』『侵入に、』あのネットワークに侵『ゆう』し、NEMのサーバーにアクセスし、NEMのサーバーの『えと』秘密『やく』の方を摂取し、その秘密鍵を持って『え~』NEMを不正送金させたということが『え~』想定されております。  二重括弧の部分がためらいや言い間違えです。部分的に震えた声も聞き取れます。 0:18:09~ 大塚氏の発言の中に「ちょっと」「え~」「そちらはですね……」というためらいが目立ちます。 0:28:06~ 大塚氏の発言の中に「現時点では、複数の者に送られていることが確認の出来ております」という言い間違えが生じています。 0:29:21~ 大塚氏の「イメージとしては、そのようなかたちになります」という発言の語尾が消えます。 以上のような、ためらい、言い間違え、震える声、消える声、これらの動きは感情的なブレや認知的な負担を意味します。 0:32:54~ 和田社長の口角が僅かに引き上げられます。これは幸福の微表情の可能性があります。この微表情はすぐに口角が引き下げられる感情抑制の動きによって消失します。 0:50:30~ 大塚氏の二点目の説明の最後がその他の点の説明のときに比べて、語尾が消えます。 1:13:42~  この時間の前後にもためらいや言い間違えがあります。これに加え、大塚氏の唇が内側に巻き込まれています。これは感情抑制あるいは認知的な負担の高まりを示す表情です。  以上より、他の話題について話しているときに比べ、ウィルス感染に関わる話をしているとき、和田・大塚両氏から感情抑制や認知的な負担が高まる動きが多く生じていることがわかります。  なぜウィルス感染に関する話題のときに、こうした変化が多く生じているのか。すなわち、感情がブレる、あるいは認知的に負担を抱えているのでしょうか?  単純に考えれば、大塚氏の「捜査上話せない」という言葉に集約されます。捜査上話せないから「余計なことを口走らないように」と考え、以上のような非言語サインが生じた可能性があります。和田氏の幸福の微表情については、緊張すると笑ってしまう性格、という解釈も不可能ではありません。  一方、本会見までに十分な調査が出来ず、発言に自信がない、あるいは捜査機関にも語っていないことがあることからくる負担、という可能性もあります。  表情分析や非言語分析から直接、感情抑制・認知的負担の原因、つまり、人の心を見通すことは出来ませんが、精査ポイントを効率的に絞り込むことは出来ます。  ウィルス感染に関わること(例えば感染の時系列やウィルスメールの内容など)及びその関連が強いと考えられる出来事・関係者について捜査を進めることで効率的に情報収集でき、本事件の真相や仮想通貨の新たなセキュリティー上の課題がわかるかも知れません。 【清水建二】 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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