存在感を増すCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)。どんな企業がやっているのか
日経新聞」)
スタートアップ企業は、資金調達のニーズだけでなく、それ以上に、人材獲得・育成、マーケティング、技術開発を課題だと捉えており、事業会社から資金調達を受けることで課題解決および事業拡大を図ることを期待しているのだ。
「ベンチャーキャピタル最新動向レポート(2016年1月)」(参照:一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会) でも、2015年新規組成のファンド内訳は、組成金額ベース、組成件数ベースともに独立系VCがトップシェアであるものの、金融機関系VC、事業会社系VC、大学系VCの組成が進んだとされている。事業会社系VCは、組成金額ベースで28%(トップの独立系VCは35%)、組成件数ベースで25%(トップの独立系VCは39%)とプレゼンスを高めている。
以下、海外および国内の事業会社系のコーポレート・ベンチャーキャピタルの事例を見ていきたい。
◆インテルキャピタル
インテルキャピタルは、1991年以来、世界1,500社に122億米ドルを投資し、645社のポートフォリオ企業が公開または買収された。世界で最もアクティブなコーポレート・ベンチャーキャピタルの1社である。
インテルキャピタルは、iZettle(スウェーデン発のスマホ決済サービス)、Docusign(ドキュサインの電子署名)への投資が知られている。日本でも、LeapMind(電力が限られた小さなコンピューティング環境でもディープラーニングが稼働する技術)へ投資を行っている。
◆GV:旧グーグルベンチャーズ(Google Ventures)
GVは、2009年にGoogle VenturesとしてスタートしたAlphabet、Inc.のベンチャーキャピタル部門である。ライフサイエンス、ヘルスケア、人工知能、ロボット工学、運輸、サイバーセキュリティ、農業の分野において、300社以上に投資している。(参照:Portfolio)
Uber(自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリ)も投資先のひとつである。
◆アリババ
Alibaba(阿里巴巴)の金融部門であるAnt Financial(螞蟻金融)がコーポレート・ベンチャーキャピタルの役割を果たしている。バイクシェアリングのOfo(小黄車)、ライドシェアの滴滴出行などへの投資実績がある。
◆トヨタ:Toyota AI Ventures
今年7月、トヨタ自動車の子会社で、米国で人工知能等の研究開発を行っているToyota Research Institute, Inc.は、1億ドルを投じ、ベンチャー投資を行うベンチャーキャピタルファンドを設立すると公表した。TRIが設立した“Toyota AI Ventures”がファンドの運営をおこなう。
ファンドの対象分野は、人工知能、ロボティクス、自動運転・モビリティサービスおよびデータ・クラウド技術の4分野である。TRI本社からベンチャー企業へ助言やサポートを提供することを通じ、育成支援も企図している。
Toyota AI Venturesは、Nauto(シリコンバレー、自動運転技術)、SLAMcore(英国、自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術)、Intuition Robotics(イスラエル、高齢者の友達ロボット)へ投資をおこなっている。
スタートアップ企業に対して、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、すなわち系列下のVCを含めて、事業会社の関与、事業会社のプレゼンスが高まっている。
昨年11月20日付の日経新聞によれば、スタートアップ企業による資金調達先の意向について、回答38社から、「事業会社」28社(74%)、「VC(ベンチャーキャピタル)」26社(68%)、「事業会社系VC」18社(47%)、「銀行」15社(40%)が得られたという。(参照:「1
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