30秒で5億4500万円! マーケティングの頂点、スーパーボウルで流れたCMって?

米CMではお馴染みのライバル社を揶揄するCMも

「Skechers」:大手スポーツシューズ会社のCMには、NFLの殿堂入り選手ハゥイー・ロングが出演。飛行機内で同社のワイドフィット商品の快適さをファーストクラスに例える。 「Skittles」:フルーツ味のキャンディは、「世界一高額な広告を製作……ただし、観ることができるのは一人だけ」というギミックを仕掛けた。一般視聴者が観ることができたのは、Facebookでライブ配信された全18分に渡る「世界一高額なCMを観る人の様子」のみ。コンセプトを理解するだけでもひと苦労だ。ちなみに本編が公開されるまでのティーザー動画には、ドラマ『フレンズ』のデヴィッド・シュワイマーが出演した。 「SoFi」:学生ローンの借り換えサービスを提供する会社。夢を実現するため、ローンを軽減しようというストレートな内容。 「Sprint」:ソフトバンク子会社である携帯電話事業者のCMには、たくさんのロボットが登場。「そんな契約をして無駄遣いするなんて」と研究者をあざ笑い、携帯事業者を乗り換えさせる。ダークな近未来SFだ。 「Stella Artois」:ベルギーのビールブランド。俳優のマット・デイモンが発展途上国に飲料水を提供するキャンペーンを宣伝。 「T-Mobile」:ソフトバンク傘下のSprintと合併かとも思われた大手携帯電話事業者。が2017年にソフトバンクは合併交渉を断念。さまざまな人種の赤ちゃんを映し出し、「多様性」「平等性」「声を届けること」を謳うが、ちょっとくさすぎるかも……。 「Tide」:洗剤ブランドは人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』などに出演しているデヴィッド・ハーバーを起用。これまでにスーパーボウルで放映されてきた自動車やビール、ひげ剃りなど、さまざまなCMのパロディにハーバーが登場し、「これはタイドのCM」と水を差していく。 「Tourism Australia」:オーストラリア観光局は、なつかしの映画『クロコダイル・ダンディー』最新作の“ニセ”予告編を公開。ダニー・マクブライド、『マイティ・ソー』シリーズのクリス・ヘムズワース、『レ・ミゼラブル』のヒュー・ジャックマンとラッセル・クロウ、『スーサイド・スクワッド』のマーゴット・ロビーなど豪華スターが勢ぞろい。実際に映画が製作されるのではないかという噂も。 「Toyota」:日本からは当然の如くここ。スポンサーを務めている冬季五輪にフォーカスした内容。ロボット技術や電気自動車とアスリートを並べ、「不可能を始めよう」と謳う。 「TurboTax」:税金用の会計ソフトウェア。子どものベッドの下に潜むモンスター(税金)も、会計アプリを使えば怖くないというファンタジー風の内容。 「Turkish Airlines」:健康情報番組『ドクター・オズ・ショー』のオズ医師が、健康的な空の旅を楽しむ方法を伝授。 「Universal」:元NFLのスーパースター、ペイトン・マニングが子供たちを連れてユニバーサル・スタジオを案内する。 「Verizon」:電気通信事業者。洪水被害や救助隊員の画像を背景に、救助要請の音声を流すというシンプルな内容だが、「彼らは電話に答える。私たちの仕事はそれを確実に受けられるようにすること」というメッセージは説得力抜群だ。 「WeatherTech」:高級車向けのフロアマットなどを提供しているアクセサリーパーツメーカー。アメリカ国旗を掲げ、アメリカ人によってアメリカ国内で清算していることをアピールした。 「Wendy’s」:マクドナルドが冷凍肉を使っていることを揶揄した『氷山』なるCMを公開。「タイタニックを沈没させた氷山も凍ってたよね」というテロップののち、ウェンディーズでは一切冷凍肉を使っていないことを強調した。 「Yellow Tail」:オーストラリアワインのブランド。仕事終わりと思しき男性が帰宅すると、CGのカンガルーと黄色いスーツを着た男性がワインパーティを開いているという内容。  ここまで全CMを振り返ってきたが、『ヴァラエティ誌』によれば、今年のスーパーボウルのCMでもっともYouTubeでの再生回数が多かったのは「Amazon」だそう。続いて、トップ3には「Groupon」と「Pepsi」がランクイン。その他、10位以内には「Bud Light」「Budweiser」とビールブランドが食い込んだが、それ以外は映画と海外ドラマの予告編が占めた。  同誌によればテレビでの視聴率は前年に比べ7%下がり、視聴者数は約1億340万人。しかし、YouTubeでの再生回数は前年から16%アップしたそうで、“CMの予告編”などを含めたウェブ・マーケティングはこれまで以上に重要となりそうだ。  スーパーボウルの終了直後に放映されたので番外編となってしまうが、個人的に印象に残ったのは、動画配信サービスNETFLIXのオリジナル映画『クローバーフィールド・パラドックス』だ。10年前に始まった同シリーズは元々劇場公開されていたが、今回は何の前触れもなしに突然予告編を公開。新作が秘密裏に製作されていたことも驚きだが、なんと予告編の最後には「本日配信開始」のテロップが。あっという間にSNSやエンタメ系ニュースサイトで話題をさらった、そのスピード感が衝撃的だった。  今年はトヨタ(含むレクサス)のみに終わった日本企業。昨年は任天堂が「ニンテンドースイッチ」のCMを放映したが、果たして来年はいくつの企業が参入するかも注目したいところだ。 <取材・文/林泰人 写真/Quintin3265 via Wikimedia Commons (CC)>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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