北アフリカのアルジェリアが、欧州で自動車生産拠点として注目を集めている

photo by SofiLayla via Pixabay

 現在、アフリカの自動車市場は小さい。アフリカ全土で年間およそ150万台が販売されているだけだ。生産は年間100万台となっている。その6割が南アフリカで生産され、それ以外の生産国としてモロッコ、エジプト、アルジェリアとなっている。その中で急激に注目が集まっているのがアルジェリアである。  プジョーとシトロエンが柱になっているPSAグループは今年からアルジェリアでの生産を進めて行くことになっている。現地企業3社とのジョイントベンチャーで、出資比率は49%、1億ユーロ(135億円)の投資となっている。  そこで生産されるのはプジョー301とシトロエンCエリゼである。2021年に中東とアフリカで70万台の販売を予定しているという。10年後には100万台の販売を目指している。(参照:「Atlantico」、「Noticias」)  同様にフォルクスワーゲンも今年から本格的にアルジェリアで生産体制に入る。550人の従業員で初めているが、近い将来1800人まで増員することになっているという。(参照:「EFE Motor」)  筆者がフォルクスワーゲンのアルジェリアでの生産に注目するのは、生産モデルの中にスペインの自動車メーカー、セアット(SEAT)のイビサ(Ibiza)が生産されるからである。それ以外に、フォルクスワーゲンのゴルフとキャディーそしてシュコダのオクタビアも生産される。が、そこで生産の柱になるのはイビサである。現時点で生産台数の半分にあたる8000台が車種イビサであったという。(参照:「Voz Populi」)  現時点での生産能力は20万台で、これから新たにフォルクスワーゲンのポロとシュコダのファビアに加えて、セアットのアロナとレオンも生産車種に加えられることになっている。

スペインの自動車メーカー、「セアット」

 日本ではセアットという自動車メーカーのことは殆ど知られていない。しかし、現在スペインのGDPの1%を貢献している企業なのである。従業員は14500人、最近5年間で30億ユーロ(4000億円)の投資をしている。(参照:「Libre Mercado」)  セアットはフランコ将軍の独裁政権時代に自動車産業を発展させたいという要望から生まれた国策企業である。1950年に誕生し、イタリア・フィアットにも出資させて、技術供給を仰いだ。小型車「600」はスペイン市民の生活革命を導いた車種であった。600でマドリードの市民も地中海へ太陽とビーチを求めてバケーションに出かけることを容易にした。スペインが観光国として発展する礎石づくりに600は貢献した。
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アルジェリアの「天然ガス」資源も要因
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