北アフリカのアルジェリアが、欧州で自動車生産拠点として注目を集めている

 1980年にフィアットは撤退し、セアットはライセンス契約にてフィアットの車種を生産し続けた。1982年にセアットはフォルクスワーゲンと業務提携して同社の子会社となったのである。車種の名前はこれまでスペインの都市名をつけていた。車種イビサは地中海の観光の島イビサから取ったもので、1984年に誕生した。  工場はカタルーニャに3か所あるが、カタルーニャの独立問題が発生した時に本社を州外に移すように外部から執拗に圧力がかかっていたという。しかし、イタリア人でトヨタ・ヨーロッパにも勤務した経験のあるCEOのルカ・デ・メオは従業員全員に手紙を送り、「政治的安定」「法的安定性」「EU内に留まること」の3つの条件が確保されている限り、本社の州外への移転はないと通達して従業員を安心させるという出来事もあった。一方、親会社のフォルクスワーゲンはセアットが州外に本社を移すことには了解して、ルカ・デ・メオ氏の判断に一任していたという。

アルジェリアの「天然ガス」との連携も視野

 アルジェリアのフォルクスワーゲンの工場でセアットの車種を今後本格的に生産して行くということから、ルカ・デ・メオは現地を訪問。彼が関心を寄せているのは圧縮天然ガス(CNG)を燃料にした自動車の生産である。アルジェリアは天然ガスの生産国であり、スペインへは海底パイプラインによって供給されている。  CNGを燃料にすれば窒息酸化物は85%低減され、二酸化炭素も25%低減されるという環境保護の面でメリットがあるからである。問題はそれを供給するガススタンドの設置がコスト面からまだ容易ではないということである。  しかし、フォルクスワーゲンもセアットもこの分野での開発は脈ありと見ているという。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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