産業医が教える「忙しすぎる“働くお母さん”に必要な休み方」ホントのところ

武神健之
『おかあさんといっしょ』(NHK)で「うたのおにいさん」を務めていた横山だいすけさんが歌う「あたしおかあさんだから」の歌詞が、インターネット上で物議を醸しています。

サラリーマン

画像はイメージです(以下、同じ)

歌詞に「ワンオペ育児賞賛歌」と非難が相次ぐ

「あたし おかあさんだから
眠いまま朝5時に起きるの

あたし おかあさんだから
大好きなおかずあげるの

あたし おかあさんだから
新幹線の名前覚えるの…」

 と、その歌詞で描かれている、いろいろな我慢をしている主婦像に対して、ネット上では「ワンオペ育児賞賛歌」や「時代錯誤の母親像」と違和感や非難が相次いでいるようです(※作詞を手がけた絵本作家・のぶみ氏はその後、謝罪しました)。

 そもそも育児は男女双方が参加することが当然だと思いますが、夫婦共働きの場合でも女性側の負担が多く、疲弊している働く女性が多いのが現状です。私は毎年1000人の働く人と産業医面談をしています。カラダやココロの健康相談のほかに、働く女性の育児や育児疲れの相談も最近は増えてきていることを実感しています。

 私が産業医面談を通じて見てきた、働くお母さんたちは、お母さんになっても、ヒールはいて、ネイルして、立派にキャリアを重ねる人たちもいました。一方、爪を切り、走れる服を着て終業時刻と同時に保育園へダッシュしているお母さんたちもいました。

 眠いまま朝は早くに起きて、眠いまま子供の就寝後に夜に残業をしている人もいました。仕事のことを考えたくても、子供が寝るまではそのような余裕はありません。子供が寝た後も家事に追われ、自分のことを考える時間はまったくありません。

41歳「育児休暇」を切り上げた働く主婦の憂鬱

 そして、働くお母さんたちに共通しているのは、みなさん良いお母さんでいようと頑張っているということです。自分は働いているからこそ、専業主以上に頑張らなければいけないと、思いつめてしまっている人たちもたくさんいました。

 先日、産業医面談にきたのは41歳の女性で、2歳の子供のお母さんでした。ここ数か月、なんとなく心が晴れないという彼女は、人手不足のため育児休暇を2か月で切り上げ、仕事に復帰した働くお母さんでした。復帰後3か月で同僚が辞め、仕事が激増したそうです。

 平日は保育園のお迎えのために18時に一度退社し、子供をなだめながら夕食を作り、お風呂入れて寝かしつけて、それから夜に家でまた仕事をしています。週末も、家事、育児、持ち帰り残業で、家と会社の境目もない生活がもう半年続いている。ご主人は家事も育児も手伝ってくれるから恵まれてるはずなのですが、何だか気分が晴れない、とのことでした。

 仕事は嫌いではないが、最近はせかせかとこなすのみで、特に達成感やチームワークを感じている暇はない。周囲からの評価は、可もなく不可もなくの中の中。私生活でも、結婚し子宝にも恵まれ、家事育児を共有してくれる優しいご主人がいて、冷静に考えても恵まれていないわけではない。嫌なことを耐えているわけでもない。ただ、毎日が忙しいだけでした。

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忙しさだけではない、彼女の病巣

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