フィリピン・マニラの治安改善の影で広がる貧富の格差

近い将来デザイン変更が決定しているフィリピン国旗

 フィリピンは治安の悪さが有名で、東南アジア最悪との負のレッテルを貼られ「リアル北斗の拳」など名を轟かせた。そんな劣悪な治安が長年にわたり海外からの投資の足かせとなっていたが、そのフィリピンの治安が目に見えて改善している。  そのきっかけになったのは、2016年6月30日にドゥテルテ大統領の就任だ。麻薬売人に対する超法規的な処刑の容認や、過激な発言や姿勢が物議を醸したが、ダバオ市長時代からの手腕には定評があり治安を劇的に改善させてフィリピン1安全な街に変えたことが国レベルでも結果を出したと言える。  ドゥテルテ大統領は治安改善こそが経済発展の根本という考え方を大統領就任前から度々主張していて大統領就任後、超強権的な手法で麻薬とマフィア殲滅作戦を実行に移した結果、実働半年ほどの2016年、犯罪率が前年比14%減、殺人など凶悪犯罪については30%減となった(フィリピン国家警察発表)。  しかし、その一方で、マフィアや麻薬使用者4万人以上逮捕、2千人以上射殺というあまりに人権無視かつ強権的な手法は国際社会から非難の的になった。  とはいえ、そうした国際的な非難にもかかわらず、国内での支持率は依然として高いのは、フィリピン人の治安改善を望む声の現れと言える。大統領支持率は、就任1年の昨年7月は80%、9月は親族のスキャンダル発覚で60%台に急落するも12月には回復して再び高い支持率を誇っているのだ。

銃声に怯えた16年前のマニラ

 記者が初めてフィリピンを訪れたのは2002年。マニラに1泊してルソン島北部の街へ行くためだった。ガイドブック等でマニラは夜出歩くなと注意があったのでホテルで大人しくしていたら夜10時過ぎだろうか、「パン!パン!」という音を耳にした。生まれて初めて聞いた銃声だった。ドラマや映画のように銃声とは「バン!バン!」ではなく乾いた音なんだとブルブル震えながら寝たのを覚えている。  当時、マニラの「セブン-イレブン」は24時間営業していない店もあり、コンビニやスーパーマーケットの入り口には、体半分ほどのライフル銃を抱えたガードマンが常勤しており、夜間になるとライフル銃を携えたガードマンがドアボーイのようにドアを開けてくれた。これがマニラにとっての安全であり、ガードマンを配置することが顧客サービスなんだと現地在住の日本人に教わった。

店内に銃を携帯したガードマンがいる24時間営業のドラックストア

 また、10年前、2008年にも訪れている。その時は、マニラの北部のケソンシティで1か月ほど英語学習で滞在した。ケソンシティは学園都市なので比較的安全とされていたが、ある日、フィリピンは多少慣れていたのでフラッと夜間1人で外出し宿舎へ戻るとフィリピン人スタッフから「夜は危ないから外出しちゃだめだ」と厳しく叱られた。
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治安改善の裏で生じ始めた「歪み」
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