“普通のリーマン”はいかにして日本最大のMCバトル主催者になったのか? 自分の「当たり前」が「才能」に変わるとき

新連載◆「ダメリーマン成り上がり道」#1  お茶の間にも進出し、毎週末全国津々浦々でさまざまな大会が行われているヒップホップのMCバトル。アーティストの活動基盤となり、多くの観客を動員するこの文化は、今や一大産業となっている。  一般には馴染みの薄かったMCバトル文化がこれほど浸透した背景はいったい何なのか? 当連載では、イベント運営やプロモーションといったビジネス面、そして熱気を巻き起こした名勝負などの文化的な面から、その歩みを追っていく。

仕事量が多くても「自由な時間」が増えた

「世の中の大半の人って、小・中・高とボンヤリ生きてきて、やりたいことも特になく、適当なFラン大学とかに行くわけじゃないですか? で、卒業したらブラック企業に就職する。日本の大学って8割くらいはFランで、企業も8割はブラックだと思うんです。それで安い給料にも疑問を持たずに生きていく。実際、オレもそんな感じでしたから」  そう話すのはMC正社員。日本最大のMCバトル大会のひとつ、『戦極 MCBATTLE』の主催者として活動し、大好きなヒップホップの世界の裏方として成り上がりを続けている人物だ。
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戦極MCBATTLE第15章では、過去最大の観客動員を記録した

 戦極 MCBATTLEは、近年大ブームとなっているMCバトルの世界でも老舗の大会のひとつ。’07年より前身イベント『戦慄 MCBATTLE』としてスタートし、‘12年に現在の形にリニューアル。今では最大2500人以上を動員するまでに成長した。 「現在、戦極MCBATTLEには予選・本戦のほか、外伝という大会や、22歳以下の大会の予選・本選もあります。昨年からは、ラッパーのACEが所属するプラチナムプロダクションと一緒に、女性のみのMCバトル大会『CINDERELLA MCBATTLE』も始めました。現在は、だいたい週1回のペースでMCバトルの大会をやっています」  大会の様子を収録したDVDの発売、音楽レーベルの運営など多面的な活動を展開しているが、MC正社員はその実務作業をほぼ一人で行っている。  大会では会場の手配、ライブ出演者のブッキングから、数十人の出場者全員へのメール連絡まで自身で実施。スポンサー営業、経理、事務作業まで行いつつ、さらにはラッパー・ZEEBRAと毎週ラジオ番組に出演するなど、個人としても活動している。 「働き方改革」が叫ばれるなか、脱サラしたにも関わらずその仕事っぷりはブラックそのものに見えるが、MC正社員は「仕事の拘束時間はサラリーマン時代の方が長かったはず」と話す。 「朝礼のために朝8時半に出社して、帰宅するのは夜23時とか24時くらいでしたから。まあ、営業に出ている時間は結構サボってましたけど。会社員をしている人には、『好きなことを仕事にしたほうが自由な時間は増えるぞ』って伝えたいですね」
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運営を始め、周囲の視線も変化
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