最後に、筆者が遭遇した事例を紹介しよう。
「ツイッター」で、ライター仲介会社のアカウントが、大手メディアへのライター募集のツイートをしていた。リンクをたどると、掲載されるメディアはアメリカ発祥のリアル雑誌もある媒体のようだ。原稿料も悪くなく、Yahoo!にもシンジケーションを組みニュースを配信する媒体だったので、安心して仲介会社へ問い合わせたところ、Bという担当から「すぐに原稿が必要だ」と急かされ4本執筆し、無事掲載された。ここまでは何も問題はなかった。
が、ここでちょっとした事件が起こる。それまで即日返信が来ていたBから1週間返信がない。数回再送するも3週間も返信がないため、Bの所属する仲介会社代表番号へ電話すると平日にもかかわらず呼び出し音は鳴るも誰も出ない。不安を覚え、掲載媒体の編集部の電話番号を調べ、直接連絡することにした。すると、確認して折り返すと言われた直後に音信不通の担当者から番号非通知で連絡が入った。
B曰く、「インフルエンザで寝込んでいた」とのこと。3週間とずいぶんと治るまで時間がかかったようだ。合わせてBの会社の代表番号へかけても誰も出ないことも尋ねると、「弊社は営業ばかりなので全員出払っていた」という。
その後、原稿料の振込についてメールで尋ねるもまたしても音信不通。仕方なしに、掲載媒体の編集部へ再び直接電話をすると前回と同じくすぐにBから連絡が入った。
すると、Bは開口一番「あなたは顧客へ直接連絡という重大なルール違反を犯したのでライター契約を解除します」と一方的に通知された。ルール違反も何も契約書を交わしていないのでルール自体を認識していないのだが……。
原稿料はその2週間後に無事振り込まれたものの、どうにも腑に落ちない気分のまま仕事をひとつ失った。
副業的な収入に魅力を感じる人や自由業的な働き方、あるいは社会に影響力を及ぼせるインフルエンサー的な存在に憧れる人など、ライターになりたい動機もさまざまだ。しかし、なりたいからといって、迂闊に飛びつくのはリスクがある。仕事を請け負うライター側は執筆前に契約書かそれに准するものを依頼主側へしっかりと求めたり、実態がある会社かを確認するために会社訪問をしたりすることも心がける必要がありそうだ。
<取材・文・写真/我妻伊都 Twitter ID:
@ito_wagatsuma>