2014年の中国での展示会看板には中国唯一の輸入総代理の言葉が見られる
輸出規制が強化され輸出できるものが年々減っている北朝鮮に新たな動きが見られている。中国で、北朝鮮のビールブランドである「大同江ビール」の輸入代理店が増えているのだ。
中国最大のオンラインショッピングサイト「淘宝網」で検索すると多くの販売店がヒットする。価格は640mlの大瓶1本あたり15元(約260円)くらいからとなっている。つい1年前まで大同江ビールは、北朝鮮レストランで1本40元(約690円)前後、丹東や瀋陽の小売店でも25元(約430円)くらいはしており、中国を代表する「青島ビール」の600mlの瓶ビールの小売店価格が5元(約85円)くらいであることを考えると5倍強もする超高級ビールだった。
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淘宝網で販売されている大同江ビール。おまけや写真で差別化している
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このショップは送料込み2本で36.6元(約628円)で売っている
大同江ビールは、ある会社が輸入販売権を握っていた。その会社とは、以前、本サイトでもご紹介した
鴻祥集団(参照:『北朝鮮の大同江ビール、中国へ独占輸入していた企業は北の核開発協力にも関与していた』)(以下、鴻祥)の独占状態だった。大同江ビールの代理店が増えているとの情報は先月、耳にしたので最近のことだと思われるが、鴻祥との契約が切れたのか、グループを率いた馬暁紅氏が拘束されたことで北朝鮮が独占契約を反故にして新たな代理店契約を結び始めたのかは定かではない。
「北朝鮮企業が契約や約束を反故にすることは珍しいことではなく、最初に独占権を与えておいて途中で手のひらを返したように契約内容を一方的に変更してきたり、理解を超えた理由を持ち出して破棄されることはしばしばです」(大連の朝鮮族貿易商)と、一方的に反故にされたり破棄された可能性も捨てきれない。
しかし、いずれにしても北朝鮮としては、大同江ビールを新しい輸出品の目玉に据えているのかもしれない。ただ、北朝鮮は一昨年、大同江ビールの原料となる麦芽が不作で、ビール生産量が減ったという専門家の見立てもある。それが原因で昨年夏の「大同江ビール祭り」が直前での中止になったとも言われたほどなのだ。すると、外貨獲得のために国内へ回す分を輸出用へ振り替えて出している可能性が高い。
つまり、鴻祥の独占契約をやめて、代理店を増やすことで競争が生まれて商品単価が下がってしまい利益も減るだろうが、それよりも販売本数を増やして少しでも多くの外貨を得たいという北朝鮮の目論見があるのかもしれない。
大同江ビールが販売されている淘宝網の販売元を見ると多くが丹東になっているが、中には北京や広州などの会社もある。その中の北京の会社へ問い合わせてみた。
「大同江ビールは、朝鮮から列車で丹東を経由して直輸入しています。通関もしっかりと通した正規品です。中国のビールは全体的に薄味で、アルコール度数も低く、コクも少ないので、濃いビールが飲みたい人に売れています。うちは6本単位で販売しており、1回の注文で5箱(30本)なんてお客さんもいますよ」(北京の販売代理店)
代理店の朝鮮族男性は、今、中国国内に代理店が何社あるのかは知らないが代理店契約時に特に条件や制約はなかったので、十数社は存在するのではないかと明かしてくれた。
また、ある大連の貿易会社は二次代理店の誘いを中国国内の一次代理店から受けたが、その時の卸値は1本11元だったそうだ。そうすると直輸入している一次代理店はもっと安く仕入れており15元で販売しても十二分に利益が得られるわけだ。中国は国内輸送費が安いので、購入者は大同江ビールの購入価格へ送料プラスで買ってもべらぼうに高くなることはない。