さらに、大同江ビールと並び北朝鮮が新たな輸出品として力を入れているのがカレンダーだ。カレンダーといっても卓上カレンダーなど小型のものはなく、長方形の壁掛けタイプが主流だ。
金日成主席と金正日総書記は常に私たちとともにと書かれている2018年カレンダー
カレンダーはこれまでも販売はされていたが、今年は、売り込みに熱が入っているらしく、記者は複数の朝鮮族知人から北朝鮮のカレンダーを大量に買ったのでいらないかとの連絡をもらった。カレンダーには様々な図柄があり、景勝地、俳優、料理、スポーツ選手、軍人などテーマごとにかなりの種類が作られている。
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金正日総書記の生誕日2月16日は特別の太字が使われている
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4月15日は金日成主席の生誕日「太陽節」だと大きく説明している
それにしても、北朝鮮製のカレンダーはいったいどこで人気なのか?
北朝鮮のカレンダーは、日本以上に入手しづらいこともあって、意外にも韓国での需要が非常に高いと話すのは、北朝鮮の庶民生活や民生品に詳しい宮塚コリア研究所の宮塚利雄代表。
「カレンダーも色々な種類がありますが、『軍関係のもの』や『金親子の写真があるもの』は価値が高いです。北朝鮮の男どもは年末になると『どんなカレンダーを入手するか?』が問われます。万が一、『モランボン楽団』などのカレンダーがあれば、彼らはその写真に出てくる女性たちの部分を切り取って、後生大事に飾っておくとのことです」
男どもがやることは、複雑な国同士の関係があろうとだいたい似ているのはなんとも微笑ましい。
実はこのカレンダーは北朝鮮の書店などで外国人も買うことができ、その価格はなんと1、2ドル(約111~222円)相当だったりする。普段は、裏に収納してあり、店頭に出ていないことが多い。このカレンダーを日本人が買うとは思っていなかったのかもしれない。店頭に並ぶのは、日本語に翻訳された指導者語録やモランボン楽団のDVD、ガイドブックなど5ドル(約555円)以上に設定されたものがほとんだ。
住民がまったく写っていない新興住宅エリアの黎明通り
訪朝者が現地で購入する人気土産に絵葉書があるがこれも1枚1ユーロ(約135円)なので、どう考えてもコスパがいいと訪朝リピーターの間で口コミで広がっていたので知る人ぞ知る影のヒット商品だったわけだ。
毎年、北朝鮮カレンダーを販売している『レインボー通商』によると今年は北朝鮮から中国への輸送コストが2倍になったので卸値を値上げしたと一方的に通達され仕方なく値上げしたとのことだが、北朝鮮では予想もしなかった国外でのニーズに“カレンダーは売れる”と味をしめたのに違いない。
ビールと違いカレンダーは季節ものなので、売れる時期は限られている。しかし、北朝鮮では2月16日の故金正日総書記の生誕日「光明星節」で多額の資金が必要となるので、年末から1月は必死に外貨をかき集めないといけない時期にあたり、カレンダーでもいいから高く売りまくりたいと必死のようだ。
ちなみに、中国で購入したものであっても、ありとあらゆる北朝鮮製品は日本への持ち込みが禁止されているので、せっかく買ったのに没収なんてならないようにご注意を。
<取材・文/中野 鷹 Twitter ID:
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