北朝鮮住民の脱北はメディアを通じてよく耳にすることではあるが、本件については多少様相が違う。
北朝鮮側は女性従業員たちが韓国に入国した翌日には、この事実を国の内外に公表し韓国に対する徹底的な批判を行った。今までいかなる「脱北」に関しても公には認めなかったのに、だ。
韓国一部メディアの報道では、この集団脱北は韓国・統一情報院が企画した謀略であったとの説もある。
それを裏付ける証拠として、この女性従業員の脱北が、脱北を支援するNGOなどの民間団体と関わりのないところで起こったこと、中国からマレーシアを経由し1日で韓国に入国しているが、仮に脱北であったとしてもそれほどまでに手続きが順調に進む訳がないということ。
そして何よりも脱北した12人の女性従業員は一度も韓国メディアの前に現れることなく、統一情報院が「韓国での社会生活を開始した」とされているのにも関わらず、どのメディアも接触出来ていないことなど、不可解な点は多々あるのだ。
仮にこの女性従業員の脱北が真実であるのであれば、韓国政府は帰国後の彼女らの安全の担保が取れないという人道的な見地から拒否せざる得ないであろうし、万が一にも、当時の韓国政府による謀略であるならば、いくら当時の政府政権がしたこととはいえ、国家的な犯罪を認めなくてはいけない。
文在寅政権が勇気を持って踏み出した南北対話の道は、同時に茨の道でもある。
北朝鮮がどの程度、南北対話に重きを置くのか。韓国政府がどれだけ北朝鮮から譲歩を引き出せるのか。外交巧者の北朝鮮に対する、韓国政府の交渉力が問われている。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>